人間嫌いの絆し方

渦巻く思い ページ8

「さあさあ！樹(いつき)も飲みな飲みな！」


「グビッといこう！グビッっと！」


『ごめん。私お酒飲めないから遠慮しとくよ…』


「え〜つまんなーい！」


『…本当にごめん』


　今日は会社で有給休暇を取り、中学生以来の旧友達と集って飲み会をする、ミニ同窓会のようなものを行っていた。

　かれこれ一時間以上話し込んでいるのだが、一向に飲み会が終わる予兆は見られず、私はただこの場で空気となり座っているだけであった。


　ーー実際、私達は互いを旧友と呼ぶにもどこか訝しい関係であったのだ。




「てかさー樹」


　暫く虚無になっていると、唐突に同期の一人に声をかけられ、些か驚きつつも私は彼女の話に耳を傾けた。


「彼氏とかできた？ほら妖怪とか信じてるオカルト好きの彼氏とかさ！」


『いないよそんな人』


　オカルト…。その言葉に一瞬だけ表情が崩れそうになったが、なんとか耐え、私は笑って彼女の言葉をあしらった。


ーー「てかオカルトってそう言う事ねー。懐かし〜！壁に百面相しながら話しかけてた樹！」


「そうそう！あとさ、誰も居ない教室の角指さして、先生あそこに居るの誰ですかって聞いてたりもしてたよねー。あれ冗談でもちょっと私怖かったんだから！」


「今となってはただの黒歴史だねー」


『うん…。だからこそ、もうこの話はやめてくれない？私も結構恥ずかしいから』


「まーまー！私達の黒歴史も後で洗いざらい話すからさ！今は付き合ってよ！」



「“友達でしょ？私達！”」



　その言葉を聞いた途端、私の心にずっしりと、何かどす黒い感情が渦巻いたように感じた。










ーー『ただいま…』


　結局、私は飲み会に最後の最後まで付き合わされ、解散した頃には既に日付が変わっていた。



「なんじゃお主、随分酷い顔をしておるな」


　家に帰り着き早々、ゲゲ郎さんは私を見るなりそう呟いた。


　『…そんなに酷い顔してますか？』


　内心、ゲゲ郎さんが私を気にかけてくれていることに驚いていたが、敢えて触れずに私は話を進めた。


「何と言うかのう…。怒りや悲しみの合わさった複雑な表情をしておる」


　私の顔をじっと見つめるなり、ゲゲ郎さんはそう言うのだ。


　そんな表情をしているなど一切自覚のなかった私は、その言葉に驚き目を丸くした。





ーー「ほれ、少し話でもせぬか？」


　その場で暫くぼうっと突っ立っていれば、ゲゲ郎さんは私の腕を掴み何処かへと向かって歩き出した。

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