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綻ぶ口元 ページ6

「美味いの…」

 一口、恐る恐るといった様子でお粥を口元へ運んだゲゲ郎は、少しの咀嚼の後、無意識のうちにそう呟いた。


 そして、そのまま次へ次へとお粥に手を伸ばし、数分も経たぬうちにゲゲ郎は小鍋の中を空っぽにしてしまったのだ。


 ーー持っていたスプーンを小鍋の中に入れ、綺麗に蓋を閉じた後、ゲゲ郎はさっきまで自分が眠っていた布団へと仰向けに倒れ込んだ。

 天井の明かりをぼうっと見つめるその表情からは、どこか複雑な感情が見て取れる。


 ーー過去の追憶からも、ゲゲ郎は人間の事を酷く憎み嫌悪していた。

 それなのに、現在の自身に至っては、人間の元で介抱され食を与えてもらうという、その考えからは矛盾した生活を過ごしているのだ。


 ーー昔から抱いていた己の考えに反し、人間に少しずつ絆されてしまっている自分を、ゲゲ郎は心の中で無理矢理否定していた。

 そして、あの人間を心做しか受け入れそうになっている自身に、おのずとゲゲ郎は気づかぬ振りをしたのだ。















『疲れた〜』

 定時通りに仕事の終わった私は、安堵の溜め息をついた(のち)、帰路を通って家へと辿り着いた。


 その()は鞄を片付け、服を着替えて洗濯物に出すいつも通りの事をしていた。


 ーーしかし、いつもと違うのはこの後だ。

 私は真っ直ぐ寝室へと向かい、ゆっくりと部屋の扉を開けた。


 全開になった扉の向こうには、布団を被ることなく隅へと払いのけ、着物一枚で眠っている、今朝とはなんら変わりのない様子のゲゲ郎さんが横たわっていた。


 ーーその側には私の作ったお粥が置かれており、てっきり食べていないだろうと思い込んでいた私は、温め直したら食べれるだろうかと考えながら、ゆっくり小鍋を持ち上げた。

 すると、持ち上げた小鍋の中からカランッという聞こえるはずのない音が聞こえ、些か驚いた私は再度小鍋を机に下ろし、まさかと思いながら蓋を開けた。


『食べてる…』

 十中八九ゲゲ郎さんがお粥を食べるなどあり得ないと思っていた私だが、いざ帰って蓋を開けてみれば、中身は米粒一つ残っておらず、完璧と言いたくなるほど綺麗に完食されていたのだ。




 ーーただ用意していたお粥を食べてくれただけ、それだけの事のはずなのに、我知らずその時の私の口元は綻んでいた。

夢か現か→←正直な音



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永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» いえいえとんでもない!すごく嬉しいお言葉です!今後も気長に付き合っていただけると有り難いです! (12月9日 21時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - 永久瀬さん» ご返信ありがとうございます!こちらこそ無理なお願いで申し訳ありません!お話大好きなので今後も読み続けます! (12月9日 20時) (レス) id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» コメントありがとうございます!ご要望にお答えできず大変申し訳ないのですが、名前変更を可能にする予定は今のところ考えておりません。今後時間に余裕ができましたら、もう一度考えさせていただこうと思います。本当に申し訳ありません!! (12月9日 19時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃくちゃ好きなお話です!!これ名前変更することって可能ですか?? (12月9日 19時) (レス) @page8 id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - アミさん» ありがとうございます!更新はゆっくりになる時もあるかもしれませんが、頑張って書いていこうと思います!何卒、今後もよろしくお願いします! (12月9日 8時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:永久瀬 | 作成日時:2023年12月3日 21時

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