杞人天憂 ページ17
『じゃあ、そろそろ帰りましょうか』
「そうじゃな」
クリームソーダを堪能した樹とゲゲ郎は、ぞろぞろと人が増えつつある店内を見遣り、丁度よい頃合いだろうと考え、喫茶店を出ることにした。
「そこのお客様」
樹が会計を済ませ店を出たところで、後ろについてきていたゲゲ郎が店長に呼び止められていた。
二人の様子を見るに、ひそひそと何か話しているようだった為、樹は気を使って店の外のベンチに座り、ゲゲ郎達が話し終えるのを待っていた。
ーー「なんじゃ？わしに用か？」
「はい。急に呼び止めてしまってすみませんね。ただ少しお話したいことがありまして」
少し申し訳無さそうな表情を浮かべながらも、ご老人の店長は早々に話を始めた。
「樹ちゃんのことです。私は彼女が幼い頃からの知り合いでしてね。昔からあの子の事をよく知っているんですよ」
ひどく懐かしそうに、そしてどこか遠くを見据えながら語る店長の姿を、ゲゲ郎はただじっと見つめていた。
ーー「小学生だった頃の彼女は、毎日のように此処に訪れていました。いつもいつも転がり込むように駆け込んでね…。
最初は私も何事かと思って何となく彼女を受け入れていました。
でも、毎日引き攣った表情をして、まるで何かから逃れるかのように此処へ来る彼女を見るうちに、もしかしたら彼女には、自分には見えない何かが見えているんじゃないだろうかと思うようになったんです」
“何か”と言われても分かりづらいとは思いますが…。
と述べる店長の言葉の意味を、その“何か”と同じ類に含まれるゲゲ郎は、実際誰よりも理解していた。
「人ならまだしも、その得体の知れない何かに向き合う方法を知らない私には、彼女に何もしてやる事ができませんでした。
今思うと、此処は彼女にとって唯一の居場所になっていたのかもしれません。
それでも、彼女は決して涙を見せることも、弱音を吐くこともなかったんです。本当に強い子だと、私は染み染みと思っていました…」
ーー「…じゃが、その強さはいつしか彼女を変えてしまった。そう言う事であろう？」
突如、ゲゲ郎の口から紡がれた言葉に店長は驚き、目を丸くしていた。
「彼女とは、お主ほど長い付き合いではないがのぅ。わしもそのくらいは知っておる。
それに、お主が樹の何を心配しておるのか知らぬが、杞憂じゃろうな。
…あやつにはもう、わしがついておる」
男の目を真っ直ぐ捉えながら、ゲゲ郎はそう呟いた。
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永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» いえいえとんでもない！すごく嬉しいお言葉です！今後も気長に付き合っていただけると有り難いです！ (12月9日 21時) (
レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - 永久瀬さん» ご返信ありがとうございます！こちらこそ無理なお願いで申し訳ありません！お話大好きなので今後も読み続けます！ (12月9日 20時) (レス) id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» コメントありがとうございます！ご要望にお答えできず大変申し訳ないのですが、名前変更を可能にする予定は今のところ考えておりません。今後時間に余裕ができましたら、もう一度考えさせていただこうと思います。本当に申し訳ありません！！ (12月9日 19時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃくちゃ好きなお話です！！これ名前変更することって可能ですか？？ (12月9日 19時) (レス) @page8 id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - アミさん» ありがとうございます！更新はゆっくりになる時もあるかもしれませんが、頑張って書いていこうと思います！何卒、今後もよろしくお願いします！ (12月9日 8時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：永久瀬 | 作成日時：2023年12月3日 21時
