初の感覚 ページ16
『そんな勢いよく食べなくても、さくらんぼは消えたりしませんよ』
私の手から一瞬にして消え去ったさくらんぼは、今やゲゲ郎さんの口の中で美味しそうに咀嚼されている。
『まぁでも、気に入ってくれたのならそれでよかったです』
今度はクリームソーダを恐る恐る飲んでいるゲゲ郎さんを見つめ、私は自然と目を細めながらそう呟いた。
「…!なんじゃ!?これは!」
突如、ゲゲ郎さんがついにクリームソーダを飲んでくれたかと思っていれば、彼は慌ててグラスから手を離し、間の抜けた表情でそう呟いたのだ。
『え、ど、どうしたんですか?』
その様子に自分もびっくりしてしまい、私は目を丸くしてゲゲ郎さんに問い掛けた。
「…樹よ、このくりーむそーだには電気でも入っておるのか?」
『で、電気?そんなもの入ってませんが…。あ、もしかして炭酸のこと…』
真剣な顔つきで問われ、何事かと思い話を聞けば、ゲゲ郎さんはどうやら初めて飲む炭酸飲料に驚いただけのようで、その理由を知り私の焦りは一気に解れていた。
『急に電気なんて言う単語が出てきたから驚きましたよ。でも、確かに炭酸はビリビリした感じがしますからね。私も昔は苦手で飲めませんでしたから、全然無理に飲まなくても大丈夫…。って、もう飲み終わってる…』
話している際中にゲゲ郎さんのグラスを垣間見れば、既に中身は空っぽになっており、ゲゲ郎さんを気にかけてと思い、述べていた私の言葉は無意味なものとなっていた。
「この程度慣れたらお手のものじゃ」
そう得意気な顔で話すゲゲ郎さんがどうしても可愛く見えてしまい、私は思わず吹き出して、どこのツボにはまったのか暫くの間笑い続けていた。
その
ーー『ここの喫茶店はクリームソーダの他にも、定番のゼリーやケーキが何種類もあって、どれも本当に美味しいんですよ。だからいつか、それもゲゲ郎さんに食べてもらいたいなって。あ、勿論無理強いはしないので気が向いたらでいいんですけど…。その、もしよかったら、またいつか一緒に来てくれないかなと思いまして…』
話し掛けている内にだんだんと不安になり、語尾が小声になりながらも、私はゲゲ郎さんにそう尋ねた。
「…楽しみにしておこうかのぅ」
どこか素っ気ない返事でありながらも、しっかりと聞き取ることのできたその言葉に、私の口角はおのずと上がっていた。
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永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» いえいえとんでもない!すごく嬉しいお言葉です!今後も気長に付き合っていただけると有り難いです! (12月9日 21時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - 永久瀬さん» ご返信ありがとうございます!こちらこそ無理なお願いで申し訳ありません!お話大好きなので今後も読み続けます! (12月9日 20時) (レス) id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» コメントありがとうございます!ご要望にお答えできず大変申し訳ないのですが、名前変更を可能にする予定は今のところ考えておりません。今後時間に余裕ができましたら、もう一度考えさせていただこうと思います。本当に申し訳ありません!! (12月9日 19時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃくちゃ好きなお話です!!これ名前変更することって可能ですか?? (12月9日 19時) (レス) @page8 id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - アミさん» ありがとうございます!更新はゆっくりになる時もあるかもしれませんが、頑張って書いていこうと思います!何卒、今後もよろしくお願いします! (12月9日 8時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:永久瀬 | 作成日時:2023年12月3日 21時