過去の追憶 ページ15
「お主、あやつと知り合いなのか?」
『はい。ここの喫茶店の店長とは、私が幼い頃からの知り合いなんです』
注文したメロンクリームソーダが届くまでの間、私はゲゲ郎さんと他愛もない会話を繰り広げていた。
『昔はよく、変な妖怪に追われては此処に逃げ込んでたなぁ…』
私が妖怪を目視できるという珍しい体質を持ち生まれたのをいい事に、ほんの悪戯心だとは思うが、幼い私を脅かしては執拗に追ってくる、面倒くさい奴らが過去には多く居たのだ。
此方が気づかぬふりさえすれば、相手も興味を失いあんな経験をする必要はなかっただろうが、当時の私には妖怪と人間の区別すらついておらず、そんな対処法など微塵も思いつかなかったのだ。
『と、まぁ…。いろいろあってこのお店の店長には本当にお世話になったんですよ』
これ以上話しているとせっかくの雰囲気が暗くなってしまいそうだった為、私は一度明るいトーンで会話に区切りをつけた。
「…なる程な」
それを悟ってくれたのか、私の方からスッと目を逸らしたゲゲ郎さんは、黙したまま店内をキョロキョロと見渡していた。
「お待たせしましたー!メロンクリームソーダでございます!」
それから暫くして、今か今かと待ち侘びていたクリームソーダが漸く私達の元へと届いた。
「これがあのくりーむそーだと言うやつか!」
興味津々といった様子でクリームソーダを見つめるゲゲ郎さんに耐えきれず、クスクスと笑みを零しつつも、私は早速クリームソーダに手を付けた。
『ん!やっぱりここのクリームソーダは美味しいですね。ゲゲ郎さんも早く食べてみてください』
昔と変わらない美味しさを保ったクリームソーダに感動した私は、未だにスプーンも持とうとしていないゲゲ郎さんにそう言い促した。
「そうじゃな。…して樹、この赤い実はなんじゃ?」
『それはさくらんぼですよ』
物珍しそうにさくらんぼを摘み上げ問い掛けてきたゲゲ郎さんに、私は端的に答えた。
『美味しいですけど種があるので、そこは注意してくださいね』
そう言うと真っ先にさくらんぼに齧りついたゲゲ郎さんは、みるみるうちに表情をきらきらとさせて、実の部分を咀嚼していた。
『気に入ってくれたみたいでよかったです。あ、私の分もどうぞ』
ゲゲ郎さんの目の前にさくらんぼを差し出すと、彼はそれを手渡しで受け取るのではなく、わざわざ身を乗り出して私の持っていたさくらんぼにパクリとかぶりついた。
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永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» いえいえとんでもない!すごく嬉しいお言葉です!今後も気長に付き合っていただけると有り難いです! (12月9日 21時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - 永久瀬さん» ご返信ありがとうございます!こちらこそ無理なお願いで申し訳ありません!お話大好きなので今後も読み続けます! (12月9日 20時) (レス) id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» コメントありがとうございます!ご要望にお答えできず大変申し訳ないのですが、名前変更を可能にする予定は今のところ考えておりません。今後時間に余裕ができましたら、もう一度考えさせていただこうと思います。本当に申し訳ありません!! (12月9日 19時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃくちゃ好きなお話です!!これ名前変更することって可能ですか?? (12月9日 19時) (レス) @page8 id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - アミさん» ありがとうございます!更新はゆっくりになる時もあるかもしれませんが、頑張って書いていこうと思います!何卒、今後もよろしくお願いします! (12月9日 8時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:永久瀬 | 作成日時:2023年12月3日 21時