懐かしき人 ページ14
ーー後日。
「ほう。此処がその喫茶店と言うやつか」
『そうですよ。今度こそ約束通り来れてよかったです』
何とかもう一度休暇を取ることができた私は、次こそは必ずゲゲ郎さんを連れて行くと約束していた例の喫茶店に訪れていた。
「然程人間も来ていないようじゃな」
平日のお昼が過ぎた時間帯。
それなら人も殆ど来店していないという条件で、私はゲゲ郎さんとメロンクリームソーダを飲みに来ていたので、現時点で数人程度しかいない店内を見て、私は内心安堵していた。
「いらっしゃ〜い」
早速店内に入ると聞き慣れた男性の声が聞こえ、私は思わず声のする方へと顔を向けた。
『お久しぶりです店長』
「誰かと思ったら、樹ちゃんだったか。暫く見ない合間に随分成長したんだね」
私が声をかければ、この喫茶店の店長であるご老人の男性は、一瞬驚きつつもすぐに優しい笑みを浮かべそう答えてくれた。
「席は此処でいいかい?」
『大丈夫です。ありがとうございます』
キョトンとした顔をして突っ立っているゲゲ郎さんを、私の向かいの席に座るよう促し、店長から受け取ったメニュー表を彼に見せた。
「ところで、さっきからすごく気になってるんだけど…」
ふと、店長がこっそり耳打ちをしてきた為、一旦私はメニュー表を見ることから意識を逸らし、店長の話に耳を傾けた。
「お連れのお客様ってもしかして、樹ちゃんの
そう言いスッと動いた店長の指を目線で追えば、わかりやすく小指がピンと立てられていた。
『…違いますよ店長』
「あれ違うのかい?背丈もあって端正な顔立ちをした、なかなかの男前を捕まえたもんだなぁと思ってたんだけどね」
『囃し立てないでください。そういう関係じゃないんですから』
ジトッとした目で軽く睨んでいると、店長は慌ててごめんごめんと謝ってくれた。
「じゃあお友達かい?」
ゲゲ郎さんをちら見して、再度店長は私にそう尋ねた。
『…まぁ。そう思っているのは私の方だけでしょうけど』
「お主らは何の話をしておるのじゃ?」
私の曖昧な返事に店長が答えようとしたと同時に、それはゲゲ郎さんの声によって遮られた。
「おっと、これは失礼致しました。懐かしいお客様でしたのでつい他愛もない話に花を咲かせてしまって…。お気になさらずどうぞごゆっくりとお過ごしください」
ーーそう言うなり颯爽と立ち去る店長の後ろ姿は、昔と何一つとして変わっていなかった。
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永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» いえいえとんでもない!すごく嬉しいお言葉です!今後も気長に付き合っていただけると有り難いです! (12月9日 21時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - 永久瀬さん» ご返信ありがとうございます!こちらこそ無理なお願いで申し訳ありません!お話大好きなので今後も読み続けます! (12月9日 20時) (レス) id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» コメントありがとうございます!ご要望にお答えできず大変申し訳ないのですが、名前変更を可能にする予定は今のところ考えておりません。今後時間に余裕ができましたら、もう一度考えさせていただこうと思います。本当に申し訳ありません!! (12月9日 19時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃくちゃ好きなお話です!!これ名前変更することって可能ですか?? (12月9日 19時) (レス) @page8 id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - アミさん» ありがとうございます!更新はゆっくりになる時もあるかもしれませんが、頑張って書いていこうと思います!何卒、今後もよろしくお願いします! (12月9日 8時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:永久瀬 | 作成日時:2023年12月3日 21時