偽りの対人関係 ページ12
それから数時間以上の時が経った頃、ｶﾞﾁｬﾘと言う玄関ドアの開く音が聞こえたゲゲ郎は、ソファに寝っ転がっていた身体を起こし、そそくさと音のする方へ向かった。
『ただいま…』
げんなりとした顔でそう呟く樹を見るなり、ゲゲ郎は目を丸くした。
てっきり、久し振りの旧友との集いに、樹は満足気に帰ってくると思っていたからだ。
「なんじゃお主、随分酷い顔をしておるな」
顔を顰めながら、ゲゲ郎は遠回しに何故そうなったのかと樹に問い掛けた。
『…そんなに酷い顔してますか？』
すると樹は、自分のことなのに心底驚いた表情をしてゲゲ郎に問い返したのだ。
「何と言うかのう…。怒りや悲しみの合わさった複雑な表情をしておる」
ゲゲ郎は樹の表情から読み取れる事を、嘘偽りなく伝えたつもりなのだが、そう言うなり自分の顔を確かめるようにペタペタと触り続ける彼女を見て、どうしたものかとゲゲ郎は内心溜め息をついていた。
して、それと同時に芽生えた、樹を心配する自身の心境をゲゲ郎は蔑ろにする事ができず、人間とはこのような場合どうすれば良いものかと無意識のうちに考え込んでしまっていたのだ。
ーー「ほれ、少し話でもせぬか？」
結局、考えようにもそれ以外の方法を思いつかなかったゲゲ郎は、樹を手招きそう提案したのだ。
まだ呆然としており、意思表示のはっきりしていない樹を半ば強引に連れ出し、ゲゲ郎はこの時間帯だと比較的人間の少ない、近くの神社へと彼女の手を引き歩いた。
その時必然と樹の手を握っていたのだが、ゲゲ郎は不思議と嫌な感じがせず、寧ろ自ら初めて彼女に触れられた事に対して、些かの心嬉しさを感じていたのだ。
ーーそうして、神社へと辿り着いたゲゲ郎は、樹を社に座るよう促し、自分もその隣に座って再度頭の整理を行っていた。
何故彼女は暗い表情をして帰って来たのか。
そして今も尚、一人遠くを見据える寂しい表情をしているのか。
暫しの合間考え続けていたゲゲ郎の頭に、ふと一つの仮説が浮かんだ。
端から彼女には、友などと心から呼び合える存在が一人もいないのではないかと。
それは日頃の彼女の言動を思い返せば、嫌でも納得できてしまう紛れもない事実であった｡
ーー今まで彼女の口から、一度たりとでも対人関係を示す言葉が述べられた事があっただろうか…。
否、ゲゲ郎の記憶には、それを匂わせる彼女の言葉一つですら存在しなかったのだ。
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永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» いえいえとんでもない！すごく嬉しいお言葉です！今後も気長に付き合っていただけると有り難いです！ (12月9日 21時) (
レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - 永久瀬さん» ご返信ありがとうございます！こちらこそ無理なお願いで申し訳ありません！お話大好きなので今後も読み続けます！ (12月9日 20時) (レス) id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» コメントありがとうございます！ご要望にお答えできず大変申し訳ないのですが、名前変更を可能にする予定は今のところ考えておりません。今後時間に余裕ができましたら、もう一度考えさせていただこうと思います。本当に申し訳ありません！！ (12月9日 19時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃくちゃ好きなお話です！！これ名前変更することって可能ですか？？ (12月9日 19時) (レス) @page8 id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - アミさん» ありがとうございます！更新はゆっくりになる時もあるかもしれませんが、頑張って書いていこうと思います！何卒、今後もよろしくお願いします！ (12月9日 8時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：永久瀬 | 作成日時：2023年12月3日 21時
