零れ出る本懐 ページ11
『今からってそんな…。いくらなんでも急すぎませんか？』
唐突な誘いに困惑し、焦る様子が樹の表情から見て取れる。
ーー何の話か微塵も理解していないゲゲ郎は、ただ樹の持つスマートフォンを物珍しそうに見つめていた。
『ミニ同窓会…。…はい、そうですか。…わかりました。出席するよう伝えてください』
そう伝えると、樹はプツリと通話を切った。
『すみませんゲゲ郎さん…。あの、私今から出掛けないといけなくなりまして、だからその…』
「なんじゃ？他用があるなら早う行かんか」
声のトーンが落ち、申し訳無さそうに話しかけてきた樹を見て、事の大凡を悟ったゲゲ郎は、何食わぬ顔でそう呟いた。
『…はい。クリームソーダは今度絶対食べに行きますから。約束させてください…』
そう言うと樹は踵を返し、自室へと向かって歩いて行った。
ーーそうして準備が整い、端からしっかりと同窓会があることやその経緯をゲゲ郎に伝え終えた樹は、予定時間通り家を出ていったのだ。
何もすることがなく、寝ようにも寝られなかったゲゲ郎は、樹が食卓にオムライスと言う食べ物を置いていった事を思い出し、リビングのある部屋へと向かって移動し始めた。
「これかのぅ。…ん？なんじゃこの赤い液体は。血か？」
卓上に置かれていたオムライスに早速手を伸ばそうとしたゲゲ郎は、卵の上にかかっていたトマトケチャップを見て、ピタリと手を止めた。
「…ふむ。人間とはわしら幽霊族が好んで食べておる、蛙の目玉スープを気味悪がっておるが、平然たる顔で血を食うておるお主らも、わしらと大差変わらんもんじゃな」
赤い液体の正体がトマトケチャップだという事など知る由もないゲゲ郎は、とんだ勘違いをしたまま、オムライスを口へと放り込んだ。
「これもなかなか美味いが、やはりこの間の鯖の味噌煮と言うやつが一番美味かったのう…。明日にでも作ってくれんか頼んでみるかの」
と言いながらも、ゲゲ郎はこれまた綺麗にオムライスを完食していたのである。
ーー「…わしがこの家に来てからというもの、早何度目の夜を迎えたじゃろうな」
オムライスを食べ終えると、近くの窓に目をやったゲゲ郎は、逢魔が時を迎える空を見遣るなりそう呟いた。
「…お主はもう、わしの手の内じゃよ樹」
ーー声を抑えて発したはずの言葉は、誰もいない静かな空間に、やけに大きく響き渡った。
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永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» いえいえとんでもない！すごく嬉しいお言葉です！今後も気長に付き合っていただけると有り難いです！ (12月9日 21時) (
レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - 永久瀬さん» ご返信ありがとうございます！こちらこそ無理なお願いで申し訳ありません！お話大好きなので今後も読み続けます！ (12月9日 20時) (レス) id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - mizuiroさん» コメントありがとうございます！ご要望にお答えできず大変申し訳ないのですが、名前変更を可能にする予定は今のところ考えておりません。今後時間に余裕ができましたら、もう一度考えさせていただこうと思います。本当に申し訳ありません！！ (12月9日 19時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃくちゃ好きなお話です！！これ名前変更することって可能ですか？？ (12月9日 19時) (レス) @page8 id: 29b3887541 (このIDを非表示/違反報告)
永久瀬(プロフ) - アミさん» ありがとうございます！更新はゆっくりになる時もあるかもしれませんが、頑張って書いていこうと思います！何卒、今後もよろしくお願いします！ (12月9日 8時) (レス) id: 8005ed3d7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：永久瀬 | 作成日時：2023年12月3日 21時
