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そして冬休みへ ページ49

昨日の、今日。

相変わらずの放課後。


授業が終わって図書室に行くと、今日は降谷くんが先にいた。


すっと真っ直ぐな背中を二秒見つめて、いつも通りの席に座りお疲れ様と声をかけた。


お疲れと返してくれる降谷くんの声を聞きながら、今日わからなかった数学の問題の解き方を教えてもらおうと該当ページを探しているとき。


「そういえばヒロから聞いた。冬休みのこと」


切り出された話題に一瞬で口が乾いて、喉がへばりつく感覚がした。


「あっ…、え、と…」


なんて返せばいい。なんて言えばいい。


おそらく諸伏くんが昨日突拍子もなく提案した件だろう。


降谷くんはどう思ってる。諸伏くんは何を、どう説明した。


今日、諸伏くんに会ったら感謝の飲み物を渡したいと思ってた。でも会わなかった。


だから話がどう進んだか知らない。

昨日の今日だ。

降谷くんからその話題が出るなんて考えてなくて、心の準備もしてなかった。


けれど焦りと戸惑いで異常に働く脳はどこか冷静に、

あと数日で冬休みが始まるわけだし話はすぐ進むよね

なんて他人事に思った。


「いつも俺の家でやるんだけど、吉岡もそれでいいか?」


頬杖をついてこちらに顔を向けた降谷くんは、絵画の中の人物のようだった。


一瞬だけ世界が止まったような気がして、鼻から酸素を取り込んでからようやく私の時間は動き始めた。


「あ…その…、迷惑じゃない…?」


迷惑に決まってる。
聞かなくてもわかってる。

だから降谷くんの顔を見れなかった。


いつもは諸伏くんと二人で行う課題進行に、図々しく私も入れてもらうなんて申し訳なかった。


もっと明るかったり、友達がいたり、性格がよかったり。

とにかく、もっと私がずっといい子だったら。こんな暗い人間でなかったら。


もう少し前向きに考えられてたのかもと思うことがある。


…やっぱり、降谷くんのことを好きだなんて思わなければよかった。


自分の惨めさが浮き彫りになって、虚しくなる。悲しくなる。


好きでいることが申し訳なくて辛くなる。




「迷惑?」


凛とした冬の空気みたいな降谷くんの声に心臓が震えた。

ドクドクと脈打って、冷や汗が吹き出して。


「べつに、思ってないけど」


なんでもないような降谷くんのあっさりした言い方は

真っ直ぐ鼓膜を通って、スっと脳みそに突き刺さった気がした。

夏から冬になりまして→←特別



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かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時

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