沈む、沈む ページ47
嫌われたくない。
……嫌われたくない。
好かれなくていい。
友人と呼べる仲にならなくていい。
ただ降谷くんにこれ以上嫌われたくない。
一方的に降谷くんのことを知っていた頃よりは、今のほうがまだ嫌われていないとは思う。
でも降谷くんが私に勉強を教え続けてくれるのは、彼が優しいからであって、そこには何の意味合いを持たない。
だというのに私は降谷くんの優しさにあてられて、好きだと思ってしまった。
そんなことを思っているなんて、
こんな私に思われているなんて、
もしも降谷くんに知られてしまったら。
想像するだけで恐ろしくなる。
きっと気持ち悪がられるに決まってる。気分が悪いに決まってる。
絶対に知られたくない。
好きだなんて感情なくしてしまいたい。
ただの、勉強を教える教わるだけの関係で、十分なのに。
それだけでもとても嬉しくて有難いことなのに。
なんで。なんで。嫌だ。最悪だ。気持ち悪い。
「吉岡!」
「っ…」
ブランコのチェーンを握っていた手を諸伏くんに掴まれ驚き顔を上げた。
きっと何度も名前を呼ばれていたんだろう。諸伏くんの行動と声から察せた。
「ゼロは、吉岡のこと嫌ってないよ。なんでそんなこと言うんだよ」
「…今嫌われてなかったとしても、もし好きなことを知られたら、嫌われる…」
「嫌わないよ」
「わからないっ…なんで…だって、諸伏くんは降谷くんじゃないのに…なんでそんなこと言えるの……ッ」
言ってから、違うこんなこと言いたいわけじゃないと、気持ちが沈んだ。
感情に振り回されたくない。惨めだ。
諸伏くんに言葉をぶつけるなんて最低だ。最悪だ。
だから、
だから私はダメなんだ。
「たしかに俺はゼロじゃないけどさ」
柔らかくひどく落ち着いた諸伏くんの声が鼓膜を揺らした。
顔は、上げられないまま。耳と意識だけを集中させる。
「俺は吉岡のこと好きだし。前にも言ったけど、ゼロは嫌いなやつに自分から関わるようなタイプじゃないから」
諸伏くんの言葉だけで、不安全部なくなればいいのに。
「…諸伏くんは私のこと、好きでいてくれるんだね」
力なくへらりと笑った。
こんな私を好きだと言ってくれる人がいるなんて、笑えた。
「当たり前だろ」
「…優しいね」
「吉岡がいい子だからだよ。ゼロもきっと同じことを思ってるから、吉岡と一緒にいるんだよ」
ああ、そうだったらいいなと思った。
でも、
期待するのは怖いから。
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かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時