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座るor座るor座るor ページ46

「やっと認めたんだな」


熱狂的と言えるほどゼロを慕い、憧れ、尊敬していると言い続けてきた吉岡が


ゼロを好きだと言った。


今までの、尊敬の念を込めた好きじゃない。


ただ好きだと、好きな人だと、ようやく気づいた。



吉岡が、無意識にゼロを目で追っているのを知った時にはなんとなくそうなんじゃないかって。


本人はただ憧れているからだと言うから確信には至らなかったけど。



「なんかもっと、やばい話でもされるのかと思ってた」

「かなり危機的な状況だよ」


缶を両手に振り返った吉岡の表情が、真っ白い月に照らされた。


「そんな、この世の終わりみたいな顔するほど…?」


泣きそうで、苦しそうで、唇を噛んで、堪えて、震えて。


「この前もさ、吉岡は、自分はゼロのこと好きになったらダメだって言ってたけど、どうしてそう思うの?」


その表情はおよそ好きな人ができたときのものじゃないだろう。


せめてどこかに落ち着いて、話を聞いたほうがいいかもしれないと吉岡の手を引いて


目に入った公園へ急ぎ足で向かった。


「吉岡。ブランコとベンチどっちがいい?あ、シーソーもあるけど」

「……ブランコ」

「ん」


そうして二人でブランコに座った。


俯いたまま吉岡は、力なく地面を蹴ってブランコを揺らす。


これは……俺から色々聞いたほうがいいのか、それとも本人が話し出すのを待ったほうがいいのか。


思案しているとなぜか横から吉岡の笑い声が聞こえた。


「ブランコと、ベンチの選択肢に…なんでシーソー追加したの…ふふ」

「…シーソーも座れるだろ」

「滑り台は?」

「この公園にはないっぽい」

「あはは。あったら選択肢に入ってたの?」

「そりゃ滑り台も座れるし」

「想像した絵面的に嫌だよ」


あははと笑う吉岡にやっぱり覇気はないけど、少しは落ち着いたかなとほっとする。


そうして一通り笑ってから、ふっと訪れた静寂のあと



「…これ以上降谷くんに嫌われたくない」



小さく、小さく、吉岡はそう言った。

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かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時

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