あの夏の過ち。〈降谷零〉 (ページ43)

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意味不明ページ43

いつもよりも早く切り上げたから、辺りはまだ夕方の姿が漂っている。

けどどうせすぐに夜になる。

『今まで大変お世話になっているので』

おでんは、そう言って頑なに引かない吉岡の奢り。

『勉強のみならず寒い中毎日送ってくれるのでお礼になるかわからないけどお金は出させてほしい』

息巻く吉岡の気迫にそのまま……。

「…ふっ」

「どうしたの？」

「いや、なんでもない」

思い出し笑いをしてしまったこと、本人には言わないほうがいいだろう。

適当なベンチに落ち着いて、初めて食べたおでんは結構うまい。

はふはふとお互いおでんを食べるだけで会話はあまりないけど、それがなんとなく心地よかった。

吉岡は俺よりも多く買っていて、目が合ったとき恥ずかしそうに「いつもはこんなに食べないよ」と言った。

…あの量、食べ切れるのか？

ふと疑問に思って吉岡を見る。

あ、結構食べてる。案外食べるの早いのか。

勉強しているときのように髪は耳に掛けてて、横顔がよく見える。

吉岡の鼻、赤い。

俺の鼻も赤くなってるかな。

もぐもぐ動く口元になぜだか視線が惹き寄せられて。

そういえば食事と性的欲求には相関関係があると言われてるよなぁと、他人事みたいにふと思った。

「あの…降谷くん」

「ん？」

「あの、えっと…」

そわそわし始めた吉岡は耳に掛けていた髪を下ろしてしまった。

あ。

顔、見えにくくなった。

………あ？

今、俺、残念だと思った…？

「あまり…その…見られると、恥ずかしい」

「え、あぁ、悪い」

視線を逸らすと、笑いを含んだ声でいいよと吉岡が言った。

自分の感情がいまいちわからない。

前も、同じようなことがあった。

自分でも意味がわからなすぎて覚えてる。

脈絡もなく突然好きな食べ物は何か、吉岡に聞いた。

ほんと、意味がわからない。

なぜだか心臓がさっきよりも強く脈打っている気がする。

無意識に、また、吉岡を見る。

この短時間であっという間に暗くなった。

薄ぼんやりとしか見えなくなった吉岡の顔と、反対にハッキリ見える冷たい風に靡く金髪。

顔、見たいな。

漠然とそう思った途端、心臓の音がどんどん大きくなっていく気がした。

なんだ…なんだ、これ。

意味がわからない。