憩の出会い ページ36
『ねー、髪の色可愛いね』
諸伏くんと初めて会話をした日からそう日が経っていない夜のことだった。
行くあてもなくふらりと家を出て、結局何をしたいでもなく気がついたらコンビニに行き着いていた。
その日も、コンビニの前には何回か見かけたことのある派手な人たちが話したり携帯をいじったりとそれぞれで。
怖いなと思いつつその前を横切ってコンビニへ入ろうとしたときに、その中の一人の女の人にそう声をかけられた。
最初は怖くて、大袈裟ではなく本当に心臓が飛び出るんじゃないかと思うほど速く動いてて。
穏便に、無難に、ありがとうございますと告げた音は蚊みたいだったと今でも思う。
そのとき頭に駆け巡ったのは、この先自分に訪れる可能性がある最悪の事態の予想のいくつか。
ああ、こんな怖い思いをするんだったら夜に出歩かなければよかった。今まで通り大人しく生きていればよかった。
『セルフでしょ?何のやつで染めたの?』
悟りを開きかけていた私に気づかずその人はマイペースに話を続けた。
『アタシもそろそろ染め直したくてさ。アンタ最近夜にコンビニ来てるでしょ?
何回か見かけて、髪の色可愛いなーって思ってたの』
『あ…りがとございます』
『名前なに?何歳?あ、暇なら今からここ移動するんだけど一緒行かない?つってもそこら辺で喋るだけだけど』
胸下まで伸びた赤毛っぽい茶髪とか。肌の面積が広いタンクトップとミニスカートとか。
チラチラと光に反射する耳にはいくつのピアスがあるんだろう。
『どうする?アタシ的にはもうちょっと話したいなー、なんて』
取っ付き難そうな見た目とは裏腹に、ニッと笑った顔は人懐っこいと思った。
思わず首が縦に動いたら、その人は『まじで!やったー!』と手を繋いでくれた。
その日をきっかけに。その子をきっかけに。
逃げ道のように一時期は足繁くその場所へ通っていた。
ガラが悪くて怖いと思っていた人たちは話してみれば案外普通で。
そのとき高校にはいなかった友達という存在もできた。
最近は降谷くんと勉強していることもあって行くことはあまりないけれど。
今日みたいに息苦しくてどうしようもないとき。話し相手が欲しくて夜に飛び込む。
コンビニで何人かで待ち合わせていつもの広場みたいな場所へ移動する。
行儀が悪いと思った地べたに座り込む行為も慣れてしまった。
「勉強どう?」
「頑張れてるよ」
誰かと何でもない話をすることが心地いい。
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かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時