あの夏の過ち。〈降谷零〉 (ページ19)

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驚ページ19

「私も何が起こったのかよくわからなくて……あ、食べる？」

「ん、ありがと」

のろのろと暗い夜道を歩きながら、口の中には甘いチョコの味が広がる。

吉岡の家までのこの道も、だいぶ見慣れた。

ぽつりぽつりと、隣を歩く吉岡の口から放課後の出来事を聞かされ、

なんとなくさっきからもにょもにょと口篭らせていた理由がわかった。

「私、こんな髪だから…降谷くんに良く思われてないだろうなって思ってたんだけど」

「あー…うん」

「…降谷くんから勉強見る、なんて言われて…びっくりしちゃった」

「うん…俺も今びっくりしてる」

そもそもゼロは、吉岡のことを良く思ってなかったはず。

嫌悪は隠さず表情に出てたし。

嫌いだと言い切っていたのも知ってる。

最近はなぜか目が合うことが多くて、不快だとも言っていた。

大半が俺のエゴで、放課後無理繰り二人を引き合わせたけど、

絶対ゼロは文句を言うだろうと思ってさっさとその場を退散したわけで。

だからあいつから、吉岡の自習に毎日付き合うなんて言葉が出るなんて、予想外でしかない。

予想外どころか意味不明だ。

なんでそんなことになった。

もしかして、ゼロに心境の変化があった…とか？

「あ、そういえばね」

弾けたような声色にハッとして耳を傾ける。

「諸伏くんの策略で降谷くんと二人きりにさせられる前に、私、初めて降谷くんに話しかけられたの」

「え？今日？…て、策略って…言い方」

「お昼休みに。あれは策略だよ」

少し目元をキリッとさせたが、すぐに笑い始めて緩む吉岡につられて笑う。

「へえ。ゼロが自分から…。なんて言われた？」

「俺の事見るのやめてくれって」

ああ…あいつ、ストレートに物を言う性格だからな…。

思わず視線が遠くなる。

吉岡が、今までゼロに対して奇異の目を向けてきた奴らとは違うこと。

奇異の目に晒されてきたゼロのこと。

二人のことを知ってるからこそやるせない感情が込み上げる。

けれど思いの外言われた本人は気にしている様子もなく。

むしろ月明かりに照らされた瞳は爛々としているような。

「降谷くんね、私の名前知ってて、びっくりしたの」