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こちらに目もくれず、計算する手を止めないまま吉岡は言った。


「…時々、家で。でも、今日から毎日自習しようと思って…」


髪に隠れて表情は見えない。


「…ふーん」


全く勉強してないわけじゃない、か。


でも確かに、見ていて解らないところがあるわけじゃなさそうだった。


俺が思うほど、こいつは別に馬鹿ではないんだと思う。


じゃあなんで、吉岡は最下位辺りにいるのか。


「…苦手な科目は?」

「え、あ、暗記系…。生物とか…日本史、世界史…」


いきなりの質問に驚いたのか、小さい声を震わせて吉岡は答えた。


…暗記系が苦手か。


「明日もここで勉強するのか?」

「…うん」

「これから毎日?」

「う、うん…?」


さすがに違和感を感じたのか、吉岡は顔を上げた。


揺れ動いた髪から仄かに甘い匂いがした。

こちらを窺うような双眸は少し見開かれている。


でも、すぐに吉岡は目を逸らし、また俯いてペンを動かし始めた。


カリカリと紙を擦るペン先の音がやけに響く。


疑問に思ったはずだろうに、吉岡は何も聞いてこない。

つらつらと数字を書き記していく奴は、今、一体何を考えているんだろうか。



お互い口を開かないまま、時間だけが過ぎていく。



夕日が差し込んで橙色に染まっていた図書室も少しずつ暗くなってきた。

司書の人が電気を付けてから、外が暗くなるまであっという間だった。


時刻は七時前。

図書室が使えるのは七時までだったはず。


「…もう、七時になるけど」


俺の呟きほどの小さい声に反応して、時計を見た吉岡は、

忙しなく机の上のものを鞄に詰め始めた。


今日の自習はこれで終わりかと、自分の鞄を肩にかけ立ち上がる。


「あのっ、降谷くん…」


片付ける手を止めて、俺を見上げる吉岡は


「今日は、あの、ありがとうございました…」


そう言って小さく頭を下げた。

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かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時

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