あの夏の過ち。〈降谷零〉 (ページ1)

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夏ページ1

少し前に大きな犯罪組織を壊滅させることに成功した。

その影響から最近は専ら書類作業に追われていたため、

昼休憩は気分転換に散歩がてら外食をしようと歩いていたとき。

すれ違った人物に。

何かに駆られるように、体が動いた。

「あの…！」

咄嗟に声をかけた。

母親と思しき女は振り返り俺の顔を見た途端、目を見開いて固まってしまった。

その様子を不思議に思ったのか子供が

「お母さん？どうしたの？」

服の裾を引っ張っている。

しかし女は依然として瞳に俺を捉えたまま動けずにいた。

俺は母親よりまだ背の低い子供に視線を向けた。

風に揺れるサラサラと癖のない明るい茶色い髪。

瞳の色は黒か茶色。

肌の色は俺のように浅黒くないにしろ、

大方の人よりは少しこんがりと焼けているような気がする。

目元には見覚えがある。

男の子だからきっと中学か、高校生にもなると一気に伸びるんじゃないだろうか。

長い梅雨がようやく明けた。

じっとりとした暑さはいかにも日本の夏らしい。

真っ青な空。疎らに浮かぶ真っ白な雲。ジリジリと照りつける太陽。

どこからか聞こえる蝉の声はやけに遠く聞こえる。

太陽の眩しさに目が眩む。

じわりと汗が吹き出して、顔の横を伝っていった。

遠くに聞こえていた蝉の声が、

今はまるで頭の中で鳴いているような騒がしさに目眩がする。

あれは、あの夏は、確か………