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いきなり ページ28

放課後の図書室で、俺たちが隣に並んで座ることは当たり前になっていた。


その方が見やすいし、教えやすい。


最初は少し居心地の悪さこそあったが、今は何とも思わない。


毎日顔を合わせ、隣に座って、数時間を過ごす。


ただ真剣に黙々と問題に向き合う横顔。

飲み込みは早くないが、着実に成績を伸ばす努力家なところ。


当たり前に下位にいた吉岡を馬鹿だと思わなかったのは、ただ勉強ができない奴じゃなかったから。


そうやって俺は、この数ヶ月で、吉岡という人物像をなんとなくだけどわかったような気でいた。


「家、近いのか?」

「あ、えっと、歩いて20分くらい…かな」

「ふうん…」


だから、今。この状況になって。


そういえば吉岡と会話という会話をしたことがなかったなとふと思った。


それからは芋づる式のように。


なんで髪を染めたのかとか。進路はどうするのかとか。好きなものとか。苦手なものとか。

好きな曲が一緒だったら。本が好きだったら貸し借りもできる。


疑問と話題と好奇心と、何とも言えない高揚感。それらがじわじわと込み上げた。


俺は、吉岡のことなんてほとんど知らないんだ。

そしてそれは吉岡も同じだろう。


「あの…降谷くんの家もこっちの方なの…?」

「俺は電車通学」

「えっ…」


突然吉岡が立ち止まったから、思わず振り返る。


「なんだよ」

「あの、私、ここら辺で大丈夫だからっ…」


送らなくていいって?


「まだ10分くらいしか歩いてないぞ」

「でもほんと、家近いし…。もう暗いから、降谷くんも早く帰ったほうが…」

「なあ、」


どうやって吉岡を丸め込み家まで送ろうか。


そんなことを思いながら口から出たのは



「好きな食べもの、何…」



脈絡もないそんなことで。


俺自身意味がわからなかったのに



「ちょ……チョコレート、です」



暗がりで表情が見えにくい吉岡の口からは、いつもと変わらない口調でそう返された。

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かものはし子(プロフ) - フライドポテトさん» 励みになるコメントをありがとうございます(*^^*) (2019年9月17日 13時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
フライドポテト(プロフ) - めちゃめちゃ好きです。ドツボです。頑張ってください!!!更新待ってます。 (2019年9月17日 2時) (レス) id: 59946ff9b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年7月23日 18時

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