1：にわとりがいる ページ2
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(祐太郎)
俺がdeleで働き始めて暫く立った。
Aちゃんとも前より仲良くなったし
ケイは相変わらずだけどなんとかやってる。
今まで本当にすぐ人が辞めたの？って
思えるようになったくらいには
自分の中でここでの生活がしっくりきていた。
差し入れのコーヒーを両手に持って
今日もビルの地下にひとつだけある
大きなドアを開ける。
「ケイー！おっはー……」
………。
開いた口が塞がらない。
目の前には、勿論ケイがいる。
そりゃそうだ。ここは彼の会社なんだから。
でもヘッドフォンを付けて頭と体を揺らしながら
指でデスクを叩いてリズムを取っている
今、目の前にいるソイツは、本当にいつものケイか…？
彼と視線が合う。
向こうも動きが止まり、複雑な表情で
俺も未だ開いた口は塞がらない。
こういう時は一旦外に出よう。
もう一度ドアを開けて外に出る。
フゥ、と深呼吸して改めて中へ入ると
"いつもの"ケイがそこにいた。
…こいつは面白いぞ。
「ねぇ、ねぇケイ〜」
「ケイって何だ。」
「ケイはケイでしょ。
本人の前で呼んだ事ないだけで
みんなの前ではそう呼んでるよ。
ねぇ、ねぇケイ〜！
何聞いてたの、セイ？」
身体でリズムを取りながら
耳に手を当て返答を求めるけど
「お前が毎朝ここにくる事に
慣れてないし、慣れたくない。」
完全に不機嫌だ。
「おはよ！」
「おはようAちゃん！」
「Aも入る時はノックぐらいしろ。」
「え、何？
祐太郎くんへの説教のとばっちり？」
「俺はしたよ？」
「気づかせろ。」
「えー？どうしよっかなー？」
ピコンッ
体を揺らしながらとぼけていると
相変わらず、何の前振りもなくモグラが鳴いた。
ケイはすかさずノートパソコンを開いて
通知を確認する。
「宮内詩織、26歳。
48時間スマホが操作されなかったらスマホのデータを削除するよう設定してある。死亡確…」
「ダメだ、留守電。」
「死亡確認取れたら連絡しろ。」
「うぃー。
Aちゃん、ついてきてよ。」
「了解！」
スマホのカメラで住所を写真に収めて
隣に立っていたAちゃんの腕を取って駆け足でドアへ向かった。
ちょっとケイの視線が気になるけど、そこは無視で。
「ねぇ、Aちゃん。」
ドアを開けて外に出てから
彼女の耳元で小声で話しかける。
「また今度ノックしないで入ってみて。
にわとりいるから。」
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作者名：ミナセ | 作成日時：2019年4月9日 22時
