マトリョーシカ２ (ページ33)

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ヤスくんと会わなくなってから、２ヶ月が経とうとしていた。

初めは苦しい、悲しい、ばかりだった気持ちも、時が経てばなんてことない、

やっぱりあれは"本気の好き"じゃなかったんだと

言い聞かせるようにして、過ごしていた。

もちろん、先輩や遥さんにはちゃんと口止めをして。

｢わたしとヤスくんの問題だから、2人は口出ししないでね、余計なことは言わない。わかった？｣

酔った勢いに任せて、何様なんだと思うような目線からの物言いに、二人は戸惑いながらも、その約束とも取れないわたしの言い分を

しっかり、きっちり、未だに守ってくれていた。

なんの接点もなくなった今、それでも至る所に彼らのポスターや広告が嫌でも目に付いて、

外を歩く時はイヤホンを耳に装着し、大音量で洋楽をかけて出歩くのが日課になった。

今も例外なく、耳のすぐ近くで響く低音と流暢な英語に神経を集中させる。

家の最寄り駅で降りたわたしは、近くのスーパーに寄ってお惣菜を物色。

あんまりお腹減ってないしな…

軽いおつまみとビールでいっか

なんて思って、目に付いたポテトサラダに手を伸ばす。

｢「あっ、」｣

伸ばした手は、誰かの手とぶつかって、

わたしは慌てて手を引っ込めてイヤホンを外した。

安｢やっと会えた…｣

そう、泣きそうな顔でわたしを見つめる瞳

黒いキャップを深く被って、鼻の上まできっちりとマスクで覆った彼の表情は上手く読み取れないけど

その目は少し、潤んでいた

外したイヤホンは胸元で微かに音を漏らす

｢っ、………｣

言葉は詰まり、だけどなんて言っていいかわからなくて、

なのにヤスくんの優しい温度のあるその目に、いつまでも映っていたいなんて思ってしまう

ごめん

ごめんね

誰に対してのものなのか、わからない謝罪の言葉を

わたしは胸の中で幾度となく繰り返した。

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