６ ページ41
.
「ねえ、ソクミナ」
「うん？」
「大丈夫だよ」
「……なにが？」
「私も、お兄ちゃんも、きっと全部。だから無駄にソクミナが心を痛めなくていいんだよ、わからないけど」
「A、」
「きっと、全部大丈夫なんだよ」
うわ言のようにそう口にしたAは、まるでクプスヒョンに向かい合っていたさっきのオレみたいだ。
言ったばかりだからどういう気持ちかはわかる。
勿論過去にも経験済みだ。
「大丈夫」の言葉の真意を辿ると、結局は「大丈夫じゃない」という結論に至るのは世の常だったりする。
どうにもならない事を我慢して中に塞ぎこみ、言葉を曖昧に濁してしまうのは簡単だ。
けれどその代わり、周りを安心させるように口に出した張本人がどうしようもなく辛くなってしまう。
肩を並べていたAの隣から腰を上げ、真正面に座り直した。
今度はきちんと両手を片方ずつ取って握る。
離れて見ていた時は解らなかったけど、目の縁はいつもよりずっと赤い。
近くにいれば、それがよく解った。
「ねえ、Aはなんでオレの顔を見てくれないの？」
そう言って手をゆるく握りなおすと、Aがゆっくりと顔を上げる。
それでもまだ視線が合う事は無い。
ここに来てようやく確信を持ったけど、あの日からAはオレと目を合わせる事はしなかった。
オレだけじゃない、きっとみんなとだ。
多分、ミニョニヒョン達の事とは別に、他の何かを気に病んでいる。
「A？」
「見れないよ」
「どうして？」
「悪い事を考えてしまったから」
「誰に？」
「みんなに」
「その中にはオレも入ってる？」
「もちろん」
「言ってほしい」
「ううん、私はソクミナに嫌われたくないから言わない」
そう言って笑ったAの手が、緊張したのか少しだけ強張った。
気付かれないように静かに息を吐き出して、これから言う言葉を頭の中で繰り返しては心臓を落ち着かせる。
どうか、この鼓動がAに届きませんように。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 915人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せの(プロフ) - ゆーさん» ありがとうございます！昨日ですよね。交通機関が所々麻痺してたのでちゃんと会場に向かえてたらいいんですが……お恵みが欲しいのでプレディス神社にポイを貼りつけようと思います (2019年10月14日 9時) (
レス) id: dc29b0018c (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - 作者様のファンです。コンサートは外れてしまいましたが、握手会に行きます。作者様の分までメンバーを見てきます。作者様にもセブチからのお恵みがありますよう祈ります。 (2019年10月11日 22時) (レス) id: 4373b2733c (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - konusasanさん» 私も公演中止決定してからツイッター見れなかったです(見た)ありがとうございます、払い戻された金で宝くじ当てて私達も一緒にワルツ回りましょうね…… (2019年10月10日 8時) (レス) id: dc29b0018c (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - ゆかりさん» 思い起こせば赤髪のウーさんに「ミンギュｗｗｗ」って言ってる頃が一番楽しかったですよね。ありがとうございます、わたしたち強く生きましょう…… (2019年10月10日 8時) (レス) id: dc29b0018c (このIDを非表示/違反報告)
konusasan(プロフ) - はじめまして、作者様の大ファンです。私も12日を楽しみに生きてきて、今日ショックで何も手につきませんでした。どうか、作者様に素敵な出来事が沢山起こることを祈っております。辛いことには変わりませんが作者様の心が少しでも軽くなれば幸いです。 (2019年10月10日 2時) (レス) id: 2d5dcafa21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せの
| 作成日時：2019年9月30日 10時
