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パッと跳ねるようにAが起き上がると、その拍子にタオルが舞う。
それをAが捕まえ、縛ってあった髪の毛のゴムを外した。
バラっと広がった髪を横に流して、困ったように微笑む。
どうして笑っていられるんだろう。
泣いてくれた方が解りやすくてよっぽどいいのに。
そんな事を思いながらAの隣に座った。
「心配してきてくれたのかぁ。ソクミナは優しいね」
「うん、よく言われる」
「ハニヒョンに?」
「Aも言うじゃん」
「だって実際そうなんだもん」
多分、Aは今日ここで何もしていなかったはずだ。
スピーカーの電源はコンセントが抜かれているし、Aも汗をかいた様子はない。
それにこの部屋は寒かった。
もうやがて三月を迎えると言うのに、この国は未だに春を迎えようとはしてくれない。
暖房がついている廊下と違って、この部屋は外と変わらないくらい冷たく感じた。
「A、風邪引くよ」
「どうせ外仕事が入ってるだけだし、うちのグループの仕事が入るのはもう少し先だから」
「だめでしょ」
「もういいんだよ、どうでも」
そう言って着ていたコートをAに掛けてあげると、不思議そうな顔をして笑った。
「暖かいね」
「オレは意外と体温が高いんからね」
「でもこれだと、ソクミナが風邪引いちゃう」
「いいよ、仕事が入るのはもう少し先なんだから」
さっき言われた言葉を真似して、膝に揃えてあったAの手のひらを掴む。
Aの指先はひどく冷たかった。
そりゃそうか。
こんな寒い部屋にずっと一人でこうしていたなら無理もない。
もし会いに来たのがオレじゃなくてシュアヒョンだったとしたら、きっと大目玉を食らっていただろう。
「ごめんね、A」
「なにが?」
「気付いてあげられなくて」
「私もクプスヒョンも黙ってたんだから気付くわけないでしょ。ソクミナが謝る事は何もないよ」
「ううん。もっと早く知ってれば、一緒にいてあげられたのに」
「余計なお世話」
「それもよく言われる」
「そこがソクミナの良い所だもんね」
あははと小さく声に出して笑う。
掴んでいた指からオレの体温が全部移ってしまえばいいのに、Aの指先はちっとも暖かくなってはくれない。
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せの(プロフ) - ゆーさん» ありがとうございます!昨日ですよね。交通機関が所々麻痺してたのでちゃんと会場に向かえてたらいいんですが……お恵みが欲しいのでプレディス神社にポイを貼りつけようと思います (2019年10月14日 9時) (レス) id: dc29b0018c (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - 作者様のファンです。コンサートは外れてしまいましたが、握手会に行きます。作者様の分までメンバーを見てきます。作者様にもセブチからのお恵みがありますよう祈ります。 (2019年10月11日 22時) (レス) id: 4373b2733c (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - konusasanさん» 私も公演中止決定してからツイッター見れなかったです(見た)ありがとうございます、払い戻された金で宝くじ当てて私達も一緒にワルツ回りましょうね…… (2019年10月10日 8時) (レス) id: dc29b0018c (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - ゆかりさん» 思い起こせば赤髪のウーさんに「ミンギュwww」って言ってる頃が一番楽しかったですよね。ありがとうございます、わたしたち強く生きましょう…… (2019年10月10日 8時) (レス) id: dc29b0018c (このIDを非表示/違反報告)
konusasan(プロフ) - はじめまして、作者様の大ファンです。私も12日を楽しみに生きてきて、今日ショックで何も手につきませんでした。どうか、作者様に素敵な出来事が沢山起こることを祈っております。辛いことには変わりませんが作者様の心が少しでも軽くなれば幸いです。 (2019年10月10日 2時) (レス) id: 2d5dcafa21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せの | 作成日時:2019年9月30日 10時