ファン家のマンネは紅一点３ (ページ7)

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「ウォーヌヒョン」

「なんだよ」

「生きてますか？」

「Aはオレの状態を見て何も解らないのか？死んでる」

「そっか、残念」

カメラ監督さんから渡されたチョコバーを、ダウンのポケットに入れてウォヌヒョンを探していると、一周回って庭の畑にウォヌヒョンが立っていた。

手に持っているじょうろの注ぎ口からはポタポタと水滴が零れ落ちていて、畑の土の色を濃くしている。

そんなところに水をあげても、滞在中に何か生えてくる訳じゃないのに……

ウォヌヒョン、思っていたよりも精神的に参っているみたいだ。
肌も少し荒れてるし。

「どこにいたんですか？てっきり釣りに行ったのかと」

「散歩」

「何か収穫は？」

「じょうろ」

「そうですか、よかったですね」

それを土の上に投げるように置いたウォヌヒョンが、溜息を零して縁側に座る。

追いかけるように一つ間を置いて私も隣に座った。

私達は随分とこの環境に慣れ始めているけど、そういえば庭にもたくさんのカメラが設置してある。
いいのかな、この状況でお菓子なんか渡しても。

でも偉い人からもらったものだし、まあいっか。

「ウォヌヒョン」

「なんだよ」

「プレゼント」

そう言ってウォヌヒョンの膝へ、チョコバーを投げる様に押し付けた。

それを持ち上げて不思議そうな顔をした一瞬の後、ウォヌヒョンがゆっくりと私の方を向く。

相変わらず乏しい表情を読み取ると、驚くというよりは困惑を浮かべていた。

「A……これ、」

「カメラ監督さんに貰ったの。ウォヌヒョンに渡しても良いって」

「本当に？」

「本当に」

「他の奴らは？」

「残念ですが……」

「へ～、じゃあオレがメンバーの中から一人だけAに選ばれたって事か」

「そんな含みのある言い方はしてませんよ」

一切悪びれることも無く、躊躇う事も無く、ウォヌヒョンがビリっとチョコバーの包装を破いたのを見て、ついつい笑ってしまった。

罪悪感はあるけど、多分みんな許してくれるはずだ。……多分。

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