ファン家のマンネは紅一点３ (ページ41)

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デビューしてつい最近一周年を迎えたけど、ここまでのAを見てきた感想と言えば「体力が無さそうで、有りそうで、無い」だ。

一曲につき三分ほどしかない音楽番組なんかの短期ステージならともかく、コンサートになるとどうも厳しいらしい。

まあこれを言うと、Aだけじゃなくてみんなそうだ。
実際、オレだって厳しいと思う瞬間はそこそこある。

「これに舞台裏の移動が伴うとなると……」

「アンコールまで体力持つの？」

「大丈夫……四時間までなら……いや、三時間半……」

「減ってる、減ってる」

「アドレナリンが出るから平気だと思う。その後が心配」

三分の一ほど残っていたスポーツドリンクを飲み干して、Aが天井を仰いだ。

今日の全体練習もそうだったけど、皆(特にホシヒョン)が居る前でAはさほど疲れた顔を見せない。

ほぼ全員が床とお友達になってる時ですら、ケロリとした顔をして身体を動かしている時もある。

A曰く、疲れていることは極力悟られたくないらしい。

今は心底疲れた顔をしているけど、これはオレが最初にこの姿を発見してしまった事による特権だ。

最初にへばっているAを見つけた時、本当に死んでいるんじゃないのかと思った。
だってそんな姿を、それまで見たことが無かったからからだ。

恐る恐る『生きてる？』と尋ねたオレに、Aは『死んでる』と答え、それからと言うもの毎回この光景を見つけ出しては、Aに生存確認を繰り返している。

「ミョンホ先生、今から暇？」

「暇じゃないよ」

「え～……」

「オレは今からAの練習に付き合わないといけないからね」

「さすが」

「ほら立って」

「せ、先生……！あと五分待って！」

そう宣言したAがペットボトルを上に放り投げてもう一度寝転ぶ。

Aがこの姿を隠したがるのは、オレにも責任があるんだろう。

最初に出会ってからの数か月、確かに存在自体をデメリットとして疑問視していたし、その感情に気付いているからこそ、Aはもう誰にだって足手まといに思われたくないんだと思う。

おそらくオレ以外にも、こう考えた人間が中にも外にも大勢いたはずだ。
そして今でも、Aはそう思われていないかと心の中で恐れている。

タオルで顔を覆ったAを見下ろす。

この罪悪感への罪滅ぼしになるかどうかはわからないけど、こういう時だけでもAの力になれたらいい。

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