ファン家のマンネは紅一点３ (ページ38)

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思い返せば、たいした病気もせずに生きてきた。

なったことも無い事を共感してあげるのは難しい。
解った振りでもしようものなら、今まで築いた信用なんて簡単に崩れてしまいそうだと思ってしまう。

だとすれば、私に出来る事なんて一つくらいしか思いつかない。

「ねえ、ソクミナ。大丈夫だよ」

「なにが？」

「私が一緒にいてあげる。もちろんハニちゃんも」

膝の間に落ちた手を掬いあげて、出来るだけ明るさを装う。

私は綺麗に笑えているだろうか。
どうか、この瞬間だけでも泣き顔をこの人に見せたくはない。

「ソクミナが怖いなら私が右耳になってあげる。左側が聞こえなくなったら、ハニヒョンが左耳になってくれるよ。ハニヒョン、ソクミナのこと大好きだもん。知ってるでしょ？」

「耳が聞こえなくなったらここにいる意味なんて、」

「うちのグループには凄腕の調教師いるのは知ってる？ウから始まってジで終わる人なんだけど」

「調教師……」

「歌えるよ、ソクミナ。これからもずっと歌っていける。私とハニちゃんがずっと隣にいてあげるし、ウジヒョンが上手に歌えるまでソクミナの事見ててくれる」

「でも、」

「だから大丈夫なんだよ。もし耳が聞こえなくなっても大丈夫。そんなことは起きないけど、もし起きても大丈夫。私達が一緒に居てあげるから」

こんなことを言ったって実際の話、私にはソクミナの耳になってあげる事なんて出来ない。
なんなら本当の意味で共感する事も出来ないんだと思う。

不安なんてものは元々誰もが持っているものだから、それを簡単に取り除くことなんて無理な話だと思う。

私が一つ与えられるとすれば、何が起きても変わらないでいるという確固たる信念をソクミナに信じ込ませるくらいだ。

それだって気休めにもならないかもしれない。

末っ子に甘んじることなく生きていれば、もっとうまく言えただろうに……

「ねえ、どうやったらソクミナは怖くなくなる？一人で悩んじゃダメだって、ハニヒョンからいつも言われてるでしょ？」

「うん」

「大方『みんなに心配かけるから』って誰にも言わなかったんだろうけど、そんな事されても余計に心配になるだけなんだよ」

「でも、」

ソクミナが何かを言いかけて、首を振った。

言葉が続いて来なかったらしくて、また一つソクミナの目から涙が零れてしまった。

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