ファン家のマンネは紅一点３ (ページ27)

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「ねえ、A」

「なんですか？」

「Aからはオレがどう見えてた？」

そう尋ねると、Aが顔を上げた。

頭にハテナマークが浮かんでいるような表情は、いつもより幼く見える。

「練習生としてですか？」

「なんでもいいよ」

「顔が良い」

「それから？」

「特徴的な声をしてるけど音を外したりしないし、体力は無いけどダンスで手を抜くことはしませんよね。体力は無いけど」

「二回言うなよ」

「……今だってずっと一人で練習室に籠ってたし、根が真面目なんだなと思います」

「どうだか」

「ただ、」

歩く歩幅もスピードも変えないままAが少し思案した後、言いにくそうな顔をしてオレを見た。

「ただ、アイドルとしては繊細過ぎるとは思います」

「繊細？」

「精神的に脆そうだなって」

「それが一番ダメなんじゃない？この仕事をやっていくなら」

「そうかもしれません」

ほんの少し諦めるような、Aの笑顔がどことなくぎこちなく見える。

「私たちがこのままデビュー出来るとすれば、ジョンハンさんは最年長組に入ります」

「だろうね」

「スンチョルさんはああだし、ジョシュアさんもああで……だとすれば、ジョンハンさんは何かと忙しい立ち位置になるじゃないですか」

「うん」

「きっと、今とはまた違った心労が襲って来るはずです」

苦々しくAがそう言うから、つい笑いそうになる。

おそらくこの子が今味わっているのが、その心労なんだろう。
オレから見ても、一緒にいる二人の女の子たちはなかなか扱いが難しそうに見えた。

「Aは辞めたいと思ったことはないの？」

「ないです、一度も」

「へえ、すごいね」

「誰かに責任を押し付ける事が出来たら……とは、いつも思ってますけど」

「出来る？」

黙ってAが首を振った。

絵にかいたような『良い子』は、不条理に対する反抗心も生まれてこないらしい。

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