ファン家のマンネは紅一点３ (ページ25)

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「ジョンハンさん、今お帰りですか？」

女性のスタッフさんと話していたファンAという女の子に「おつかれさま」と簡単な挨拶をして通り過ぎると、思いがけず後ろからその言葉が聞こえてきた。

確かめる様に振り向くと、その女子がスタッフさんに頭を下げてこっちに小走りで向かって来る。

「長い時間一人で練習してましたよね、お疲れさまです」

「……どうも」

「もう宿舎に帰るんですか？」

「もしかしてまだ練習しろって言いたかったりする？」

「いえ、そういう事じゃなくて。帰るなら途中まで一緒に帰ってもらえないかな、と思って」

「はあ？」

「そのまま宿舎に帰るなら、私もついでに。一人で夜道を歩くと兄に怒られてしまうので」

そう言ってAという女の子が苦笑いをする。

この子とはそんなに話したことがない。
挨拶と、自己紹介と、あとは休憩の時「大丈夫ですか？」とたまに声を掛けられるくらいだ。

これだって周りにいる人間には誰にだって言ってるし、ただその時物理的に距離が近いからそう聞かれただけの話。

そういえば兄の方ともほとんど話したことがないな。

それでも稀に二人が一緒にいるところを見れば、嫌でも仲が良いと解る。

ファンミニョンがファンAに向ける眼差しは、オレが妹に向けるものと同じ類いの物だ。

「オレに宿舎まで送れってこと？」

「私たちの宿舎、ここから行くとジョンハンさん達のいる宿舎の少し手前なんです」

「へえ」

「なので、回り道とかはしません」

「……いいの？」

「何がですか？」

「もう夜も遅いのに、知らない男と二人で帰って『お兄ちゃん』に怒られない？」

「大丈夫ですよ」

「即答するね」

「だって、ジョンハンさんは知ってる人なので」

そう言って、目の前の少女が楽しそうに笑った。

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