ファン家のマンネは紅一点３ (ページ21)

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「A、オレに作戦がある」

ゲームが始まって数分。
そう言って、悪い顔をしたハニちゃんが笑った。

この人はこんな時ほど良い顔をする。

「耳貸して」と言われてそのままハニちゃんに近付くと、周りから「ハニヒョンが何か企んでるぞ！」と罵声が飛んできた。

その光景をちょっとだけ笑いながら、ハニちゃんの作戦を耳元で聞き、黙って頷く。

ここのスタッフさんが何をしでかすか解らない今、私達はどうしても勝たなければならない。

オレンジチームと向かい合うように、先頭を行っていたクプスヒョンを追い越して、その一歩先に出た。

正面にいるディノが不思議そうな顔をして首を傾げる。

「ディノ」

「ヌ、ヌナ……？」

そのディノの名前をもう一度呼ぶ。

というのも、これがハニちゃんの考えた作戦なのだ。

「ディノ、よく頑張ったね」

「な、なんですか、急に」

「とんでもないヒョン達しかいない中、末っ子一人だけでよく最終日まで耐えて来たね。漂流中も、嫌な顔一つ……いや、嫌な顔はしてたっけ……」

そう言い淀むと周りから「なんだよ、とんでもないって」だとか「嫌な顔は普段もしてんじゃん」だとか、すぐさま批判の声が入る。

う、うるさいな……

「ディノは本当によくやってるよ。ヌナはディノが頑張るところ、いつも見てるから」

「ヌナ……」

「今回は過酷な旅だったけど、嫌な顔をしながらも色んなことを進んでしてくれて、ヒョン達はきっと何も言わないけど、皆ディノに助けられたと思う。本当にありがとう」

そう言うと、ディノがひどく感極まった顔をした。

そのまま言葉を続け、ゆっくりと両手を開いた。

「チャニ、お疲れ様。今回もよく頑張ったね」

滅多に呼ばないディノの本名を、これ以上ないくらい優しい声で言うと、そのままディノが私の元へと駆け寄ってくる。

それなのに、私の胸の中に入る三歩手前で待ち構えていたウジヒョンがあっさりと、ディノのビブスに着いている名前のステッカーを奪い去っていった。

その瞬間にハニちゃんの高笑いが聞こえてくる。

こっちのチームは大盛り上がりを始め、あっちのチームは簡単に騙されたディノへ罵声を飛ばした。

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