ファン家のマンネは紅一点３ (ページ1)

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14少年少女漂流記②船酔いページ1

A視点

フェリーでヨソ島へ向かう間も、島に降りた瞬間も、この地での宿舎を探しにボーカルチームへ引き摺られた時も、宿舎に到着してからも、ずっと船酔いが続いている。

事前に渡された瓶に入ったあの薬を飲んだのに、全く効かなかったらしい。

苦かったのに……美味しく無かったのに……

私だけスタッフさんから呼び出され、諸連絡を聞いてから宿舎の中に戻ると、皆それぞれカメラで遊んだり、食べ物を探したりしている。

全部の部屋を一通り覗いてから、積み上げられた布団に背中を預けるハニちゃんの隣へ向かう。
ダウンを着たまま滑り込むように転がった。

「おかえり、A。どこ行ってたの？」

隣から聞こえたハニちゃんの声に耳を傾けながら、部屋の中をぐるりと見渡す。

カメラは三つ。
もちろん今この瞬間だって全て撮られている。

一瞬隣から離れたほうが良いか迷ったけど、私とハニちゃんの組み合わせは人気があるんだと会社の人から聞いていた。

それと同時に、そこそこ仲の良さを見せる様に言われている。

元々ハニちゃんとは良好すぎる関係を築いているけど、この関係が百合だか姉妹だかに見えているらしい。

本当にそう見えているんだとしたら節穴にも程がある。
それでも、この状況下ではありがたく思った。

「見た？シャワー室とかもカメラ着いてたんだけど」

「ええ……人権……」

「Aはさすがにこっちで生活出来ないだろ。別の場所用意されてたりするの？」

「お風呂とトイレは女性スタッフさんの借りてる所使って良いって。二軒隣の」

「寝るのは？」

「こっち」

「げっ、本当に？」

「……部屋余ると思う？」

「まあ広いし、大丈夫だと思うけど……」

ハニちゃんが気苦労の多そうな顔をし、カメラに向かって「はあ……」とため息を吐いた。

床に転がってハニちゃんと話していても、気持ち悪さは治る様子を見せない。

目を閉じると余計に気持ち悪さを実感するだけだ。

誰か生存キットに薬とか入れてないかな。入れてないだろうな。

ぐるぐると回る頭に嫌気が指してきた頃、ホシヒョンがこっち側にやって来た。

まだこの状況を楽しんでいるのか、にこにこしていて可愛い。

可愛いけど、どうしてわざわざ私のいる部屋で着替えようとしてしまうのか。

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