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「で、どうだった?」
「何が?」
「私達、具体的に褒められると嬉しいかどうかの話をしてたんですけど」
「ああ、」
「なに?その気の抜けた返事は……」
自分の胸に手を当てる。
いつもより早く、どくどくと心臓が大きく脈を打っている気がした。
「嬉しかった」
「胸に手を当てるほど感激したと」
「もっと言ってみて」
「ボノナ、欲張りだね」
「もう無かったりする?」
「ううん、まだ有るよ。ラップ担当してるけど歌が上手いでしょ、声が良いからね。それに……」
能天気な顔をして一つずつ丁寧に上げていくAを見ていると、さっきよりずっと鼓動が早くなる。
心臓に火が着いてしまったのか、その火が身体に広がって、あちこちを焦がしていく。
焼かれたところがじりじりと熱を持った。
Aの言葉に呼応して撥ねる心臓の音が、この狭い二人だけの空間で聞こえてしまわないだろうか。
自分はAから愛されていると思う。
目を見れば、言葉を聞けば、態度で示されれば、それはまるで当然のように受け入れられた。
それでもきっと、Aの持つその感情が恋に転ぶことは無いんだと思う。
この人の性格上、それはアイドルとしての人生が終わるまで変わらない。
終わっても変わらない可能性だってある。
でも、それで良いとすら思う。
焦がれはするけど、急ぐこともない。
だってオレの抱え込んでいるこの気持ちも、おそらく簡単には変わったりしないはずだ。
何年、何十年後になるかわからないけど、いつかAに伝えられたらいいと思う。
その答えは何だって良い。
笑い飛ばされるようなものでも、青春だったと泣いてしまうような事でも。
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作者名:せの | 作成日時:2019年8月22日 10時