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何を思い出しているのか、Aは目を細めて笑った。
今日話したカメラマンはいったいどんな顔をしていただろう、さっきまで頭の隅にこびりついて離れなかった薄ら笑いがどこかに消えていく。
「でもボノニはさっき嬉しそうじゃなかったね。私はもしかして嫌われてる？」
「ううん」
「あはは、それなら良かった」
そう笑った後に、もう一度Aが腕を組んで考える顔をする。
オレの目とAの目があって数秒、もしかしたら数十秒かもしれない。
止まった時間をAが再生させた。
「誉め言葉に具体性が足りないからボノニは共感出来てないのかも」
「具体性？」
「うん。例えばね、」
Aがオレの顔に手を伸ばして、耳にかかっていた髪の毛を撫でて横に流す。
「ガラス玉みたいな瞳が綺麗だと思うよ、目の形もね。まつげはいつ見てもカールしてて羨ましいな」
「おお……、」
「ボノナ眩しがりでしょ？朝に外へ出て目を細めている時はいつも可愛いと思ってる」
「そんなとこが？」
「もちろん。作ったご飯食べてくれる大きい口もお気に入りだよ。笑ってる時に開いてる大きい口も」
「……そうなの？」
「そうだよ、知らなかった？」
「うん」
「あとはね、くるくる変わる表情は面白いし、無駄に落ち着いててマイペースな所とか」
「それって褒めてる？」
「褒めてるよ。あとは、私よりずっと高くなった身長や身体も、頼もしいなって思う時がよくある。特に最近」
「本当？」
そう聞き返すと、ぐしゃぐしゃに頭を撫でたAが笑顔で頷いた。
その顔をみるとどうしても少しだけ、息をうまく吐き出せなくなってしまう。
Aの手がオレの頭から離れて、心臓のある位置をこんこんと鳴らすように二度ノックした。
「ボノニは真面目な話をしても茶化さないし、からかったりもしないでしょ？出会った頃から自分の信念をしっかり持ってて、いつもブレないから一緒にいて勉強になることも多いよ。正直に言うと、顔よりもそういう所が好きなんだけど、今回の趣旨からはずれるね」
下ろした手を後ろに組んで、Aが満足そうにオレを見上げる。
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作者名：せの
| 作成日時：2019年8月22日 10時
