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パフォーマンス時は波のように揺れていた向こうは、ある程度凪いでいるように見えた。
そりゃあメンバーの一挙手一投足に沸いてはいるけれど、今はずっと、穏やかなように思う。
時折掲げられるように揺れるスローガンやボードに、自分の名前を確認することが出来た。
この生まれたてのグループだと、どうやら私は知名度が高い方らしい。それもそうか。
一番最初に話を聞いたときは相当嫌われる存在になるんじゃないかと思っていたけど、意外にもそんな事にはならなかった。
私の目に見える範囲で、何か悪い事が起きるわけでもなく、このことに関してだけは予想以上にスムーズに事が運んだ。
何が要因なのかは結局わからないままだ。
兄の存在だろうか、見た目の話だろうか、それともカメラに映るところではメンバーとそこそこ距離を取っていたからだろうか。
頭の良い偉い達が頑張ってイメージ戦略をしてくれたから？
広報の人がハニちゃんと私を姉妹売りしたから？
何故か「Aは男じゃなくて女が好きだ」と噂が流れてもいるらしい。それもあるんだろう。
あとは、お兄ちゃんが大好きだという事を周りに言いふらされてるせいもある。まあ、これは事実だし……
前回放送分で、ウジヒョンと作業班の事が取り上げられたのは好感触だったと、メイクさんが言っていた。
作業班と言っても私は作曲に加わることはほとんど無いし、ウジヒョン程の苦悩を抱え込んでいたわけでもない。
前にも増してピリピリし出したウジヒョンに、もっとしてあげられる事も有ったはずだ。
それだけを今でも悔やんでいる。
だからと言って、今更どうなる話でもないけれど。
このプロジェクト中、目が回るほど忙しかった分任せられる事も多くなったし、これからは今よりも頑張らないといけない。
心のどこかでデビューがゴールだと思い込んでいた。
今になってようやく実感したものが、私の肩に重くのしかかってくる。
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作者名：せの
| 作成日時：2019年8月22日 10時
