14少年少女漂流記�〆埜紊糧媚� ページ45
A視点
番組から用意された様々なご馳走が並ぶテーブルを無視して、隣に座っているウォヌヒョンとどっちが上手く栗を剥けるか勝負をしていた。
性格が性格なだけに、ウォヌヒョンは早々と半分に割った栗をスプーンで掻き出していたけど、私は爪を犠牲にしながらせっせと綺麗に硬い皮を外している。
ウォヌヒョンとは反対隣りにいるミンギュがやたら饒舌に喋っているけど、何を話しているかは全く聞こえてこない。
バラエティ班に申し訳ないけど、同意を求められたときだけ頷き返していた。
そんなこんなで厄介な手元の木の実。
一つ目は実が崩れてボロボロになってしまった。
二つ目は途中で半分に割れてしまった。
そしてこの三つ目。
……うーん、なかなか上手に剥けたと思う。
「ウォヌヒョン、見て見て」
「お、やるな」
「でしょ？売り物みたい」
「これでAも栗の皮剥き職人になれるんじゃないか」
「ならないよ」
首を振って「あ」の形に開けられたウォヌヒョンの口へ、その栗を放り込む。
残念ながらこの人は目の前のご馳走、つまり魚介類に手を付けられない人間だ。可哀想に。
かと言って私も、メンバー達と同じ量を食べられるほどの胃袋は持ち合わせてなくて、早々と晩餐会からリタイアしてしまった。
悪いとは思っていても、いつも通りトークは他のメンバーに任せ、ウォヌヒョンの為にせっせと皮剥き芸を披露している真っ最中だ。
「なあ、A」
「なに？」
「オレ達、どこに行くと思う？」
「……さあ、どこなんですかね」
ウォヌヒョンが疑うような眼差しを向けてくるので、もう一度手元の栗に目線を寄越す。
実は少しだけ……ほんの少しだけ、今回の収録内容を聞かされていた。
一つは、相当過酷になるから覚悟をしてくること。
もう一つは、後から荷物の制限が入る事。
聞いたのはたったその二つだけど、それだけで充分すぎるほどの情報だった。
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作者名：せの
| 作成日時：2019年8月22日 10時
