しもやけ [HS] (ページ22)

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急速に心臓が跳ね、ぐっと上がっていく体内の熱が耳まで巡るのを感じた。

彼の柔らかく笑うその表情で頭の中は直ぐにぐちゃりと糸が絡まるように行き詰まる。

「僕の、彼女になってくれませんか」

湧き出てくる感情は戸惑いと、嬉しさ。
この思いが何か、私は既に知っていた。

「…わ、」

私も、好きです。
そう言おうとしたその時、ふと目に付いた自分の手。

赤切れだらけで見るに堪えないほどボロボロ。
続けて服の袖を見ると買ったばかりの時はパリッとしていた筈が、酷くよれていた。

一方ホソクくんはシワひとつない服に煌びやかなアクセサリー。飾っているように見えずとも、細部まで完璧に完成させられている。

その一瞬で夢から覚めた様な気分になった。

ホソクくんから好きだと言われ、浮かれていた意識は一気に現実へと引き戻される。

「ぁ、…えっと、」

慌てて手を隠すように下に降ろし、出かけた言葉を飲み込んだ。

“恥ずかしい”

私とホソクくんは違う。

彼には私のような人間よりも、もっとちゃんと仕事をして自立して、それでいて余裕のある女性の方が似合ってる。

彼がいい人だから、素敵な人だから。
好きだから。幸せになって欲しいから。

そんな理由ばかり並べているのに、肝心な口は吃るだけ。

彼の幸せを願うなら私が離れなければいけないのに、
私の幸せを捨てきれないのか一向に言葉が出て来ない。

そのもどかしさはいずれ、涙となって私の頬を伝った。