しもやけ [HS] (ページ20)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:12,352 hit

19 ページ20

．

「わぁ、…」

ホソクくんの車に乗ってやってきたのは都心部から離れた隣町へ行く方面にある展望台。
ここは仕事帰りによく先輩達に頼み混んで寄ってもらうことが多かったのだが、日が落ちて来たことは今までで1度も無く、新鮮に感じる。

展望台から見える街の景色は、雪のせいかいつもより幾分かロマンティックに見えた。

「ホソクくん、よくここ知ってるね？」

分かりにくい、というか地元の人でもあまり知らないこの展望台。
仕事が上手くいかなかった日、それこそ初めの二、三週間は体力的にも精神的にもキツく、見かねたユンギ先輩に連れて来て貰って初めて知ったのだが、あまりにも毎回人が居ないもので、てっきり私と先輩達しか知らないのかと思ってた、

「たまたま見つけたんだよね。大きな失敗しちゃって落ち込んでた時にちょうど。」

「そうなの？私も落ち込んでたら先輩に連れてきてもらったんだよ〜」

「ヒョンに？」

「うん。それからスッキリしたい時は来てるの。」

ここに来ると悩みなんてちっぽけに感じてくるから…よく聞くフレーズだと思うけど。そう言って笑うと鼻を赤くしたホソクくんも笑った。

「僕もそう思う。」

「でしょ？」

「うん。初めてここに来た時本当に仕事辞めるか迷ってたんだよね。しんどかったし上手くいかないことばかりでもう少し頑張ったらおかしくなりそうなくらいギリギリだった」

あの頃を思い出すようにベンチに座り夜景を眺めるホソクくんのライトに照らされた横顔に雪が相まって幻想的に見える。

「その時、同じようにため息ついてた女の子が居てね。気づかなかったから僕ビックリして出かけた涙なんか引っ込んじゃってさ？」

そういうと彼は急に声を出して笑い始めた。

「え、どうしたの？」

「いや、…その子が言ったんだ。
あなたみたいにカッコイイ人も悩むんですね、って。
自分だって十分綺麗な顔してるのに、本当に不思議そうに言うものだからつい声出して笑っちゃって。
…そしたら今までで満杯だった心の容量に少し余裕が出来て、
やっとちゃんと息を吸えたような気になれたんだ。」

ホントに些細なことだったけど、
ちゃんと笑えてなかったんだって気づけた。

…自分の休息の仕方を見直そうって思えたんだよ。