しもやけ [HS] (ページ12)

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「わ、ぁ」

派手な赤色の髪をしたセンターの人はすぅっと息を吸うとマイクを握り、歌い始めた。

テンポの早いリズムに乗って耳に届く綺麗な歌声、
出だしから会場を自分たちの色に染めたかのように一気に歓声が上がる。

何よりも、響く音楽が私を包んで真正面から受け取って欲しいと責め立てているみたいでぞわりと鳥肌が立った。

そんな観客の反応を見てか更に暑くなるバンドの人達。

楽しそうにキーボードを弾くユンギ先輩はバイトの時とは全く違っていきいきとして音楽を楽しんでる感じが全面的に伝わってくるから、

なんだか予想外すぎて口が開いたまま閉じれなかった。

「凄いね、Aちゃん」

「うん、私先輩がこんなに楽しそうなの初めて見た」

凄い、

その一言に尽きるほど、

会場の熱に、

先輩達の勢いに

圧倒されていた。

そんな中、ふと感じた視線。

気になってその方向に目を向けると

ばちり、

その人と目が合った。

あの頃とは違い、黒髪から青髪になった彼。

前より痩せたせいかくっきりと出たフェイスラインに少し化粧が施されている顔。

慌てて合わさったままだった視線を逸らすと向こうも直ぐに目線をずらした。

元彼のテヒョン。

彼がどうしてここでベースを弾いているのだろうか。

どれほど頭を捻り出しても答えが出て来なさそうなその疑問に、

考えることをやめ、赤髪の彼の歌声に集中した。