６ ページ7
「君、名前はあるのか？」
朝と夕方の体調チェックの時間、ライは必ず部屋にいるようにしてくれた。
優しい声をかけてくれる白衣の女の人はライの知ってるお医者さんと看護師さん。体温や血圧を測って朝は採血をする。けれど、体を触られると怖くて震えてしまうので、その間はライがだっこしたり、手を繋いでいたり、なるべくわたしが落ち着いていられるようにと、助けてくれるようになった。
全てのチェックが終わったあとに、お医者さんが持ってきたパソコンの画面をちらりと覗いたライが何か気付いたように顎に手を添えて、それからわたしにそう訊ねた。
「1334、は名前に入る‥‥？」
「‥いいや」
名前代わりの数字を口に出した時、ライはほんの少しだけ憤りを見せたけれど、それが自分に向かってるものじゃないことはわかった。
「‥良かったら、ライがつけてくれない？わたしの名前‥」
「俺がか？」
「うん、ライがいいの」
「ふむ、‥そうだな」
ライは顎を触りながら目を瞑り、しばらく考えてから、
「‥Aはどうだ？」
「‥A‥？」
「あぁ、呼びやすくて可愛らしいだろう？」
「かわいい？ライがかわいいって思うならそれがいい」
「そうか。では、君がこれからしあわせになれるように、願いを込めて贈るよ」
両手で優しく髪を撫でて、わたしのほっぺたを包みながら深緑の目を合わせて、ライは優しい声で「A」と生まれたばかりの名前を呼んでくれた。
耳の先から足の爪の先まで、一気に甘く痺れるような感覚に襲われた。
ライはわたしの鼻先にちゅと唇を当てて離れた後、だが自分で気に入った名前があれば好きに変えるといい、と付け加えたけれど。ライが呼んでくれる『A』という響きがとても嬉しくて、わたしは尻尾をちぎれるほど振ってしまいそうになったので、両手でぎゅっと抑えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 222人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雫 - 気長に待っています。 風邪引かないようにしてくださいね。 (3月22日 22時) (
レス) @page22 id: d6bc443752 (このIDを非表示/違反報告)
みにo(プロフ) - 月さん» コメントありがとうございます(*´꒳`*)♡うれしいです〜！♡ (3月20日 22時) (レス) id: 36c68c6318 (このIDを非表示/違反報告)
月 - 続き待ってます！ (3月18日 13時) (レス) @page22 id: 4c62b98933 (このIDを非表示/違反報告)
みにo(プロフ) - あやなみ。さん» こんにちは(о´∀`о)コメントありがとうございます‥！♡読んでくださってうれしいです！ボード‥がよくわかっていなくてどうしたらいいものか‥💦すみません‥(゜□゜;)ありがとうございます✨♡ (3月13日 23時) (レス) id: 36c68c6318 (このIDを非表示/違反報告)
あやなみ。(プロフ) - みにoさん» こんにちは！とても面白いです、もしよろしければ一緒にボードで会話しませんか？これからも更新応援してます☺️ (3月12日 21時) (レス) id: 861062e758 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みにo | 作成日時：2023年11月12日 0時
