愛しい仔猫の話 (赤井秀一・長編)

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「チッ、残党か！」

赤井の反射神経を持ってすれば、そのまま男の身体を掴み引き倒す事も可能だったが、そうすると受け身を取れないAが怪我をする可能性があった。一瞬、男の動きをそのまま見送る。周囲に目を遣り、仲間の気配を探る。

「‥っ！ゃ」

赤井の手を逃れた男は抵抗するAを抱え直し、スケートボードを加速させる。公園脇に停めた仲間の車を確認し一直線にそこへ向かう。
FBIが売買に出せば一生遊んで暮らせるような組織の実験体を保護し独占していると聞きつけた残党だった。しかも保護をしているのは組織を裏切ったNOCのライだ。残党の男達もこれは奪うしかないと情報を必死にかき集め、運良く張っていた公園のひとつで出会した。チャンスは一度きりだ。
もう少し、相手はライ1人。この少女を自分ごと車にさえ押し込んで仕舞えば‥‥‥



















「お前、ここが日本で命拾いしたな」

公園の敷地を出るまで後数歩。耳元で低い声が聞こえたと同時に、掴まれた肩がひどく軋んだ音を立てた。残党の男は突然の痛みに声も出ず、そのまま地面にうずくまる。
赤井はAを抱え、車内の男の仲間を確認する。車は男を残し急発進した。

「シュウ‥っ」
「すまない、怖かったな」

震えてしがみつくAを宥めながら、残された男に手錠をかけると、足で押さえながら同僚へ連絡を取り、逃げた車のナンバーを車両検問へかける。車種も走り出した方向も明確だったため、逃げた仲間もすぐに発見され逮捕となった。

「クソッ、そいつは高値で売れるんだ、独り占めする気かライッ」

連行されながら男は赤井に向かって叫んだ。
赤井は忌々しげに男を一瞥したが、何も答えずAへ視線を戻した。

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