君となら (ページ1)

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「おはようございます。」

事務所の総務として勤務して早5年。
気づけば27歳になっていた。

仕事内容は主に一般企業となんら変わらない、書類を作ったり社内の備品などもろもろの管理。それから社員やタレントから届く領収証の処理など、一部経理の人がやることなんじゃ…ということまでも私が担っていた。

ありがたいことに仕事に関しては社内からの信頼も厚く、お給料も申し分ないほど貰っている。

「今日Aさんいますか～」

この大型犬？に好かれるまでは何もかも順調だったんだ。

「目黒くん、どうしたのかな？」
「あ～いたいた。今日仕事何時終わり？」
「あのね、何回も言うけど私は年上。」
「ふっかさんたちはそんな細かいこと言わないけどな」
「あなたはタレント、私は裏方。」
「そんなの関係ないんだけど。で？何時に終わるの？飯行こう。そして送ってく。」
「うわ～…マイペース。」
「B型なんで」
「聞いちゃいないなこの子…」

天下のジャニーズ事務所といえど、総務で入ってしまえば事務所内でたま～に会うレベルでしかタレントと合わない。私たちが仕事をしているブースと、彼らが練習やら打ち合わせをしている場所は同じ建物内でも別の場所だから。

なのにこの、デビューを控えた目黒という男はここ2年ほど、こうしてわざわざ私に声を掛けに来る。

周りの先輩や後輩たちも「また始まった」みたいな感覚になって麻痺してるけど、これからデビューするタレントなのにどうして誰も「こんなことしちゃダメだよ」と叱らないのか、不思議だ。

「目黒～お前A誘うのいいけど撮られんなよ～」

じゃ、お先に。と彼のマネージャーをしている先輩が退勤してゆく。

「で？Aさんは？何時に終わるの？」

身長184cmから見下ろされる。

「もう終わる。」
「ふふ、じゃあ帰ろうっか。」

23歳…恐るべし。