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「賢志郎さんは、なんて言うとるん」
「ゆっくりでええよ、って」
「、、はぁ〜」
「なんじゃ!!ため息つきすぎやろ!」
甘いなあ、ほんまにあの人は。
でもきっとあのキスマークは、
俺を焚き付けるためにつけたものに間違いなくて。
「、、人のこと好きなったことないん?」
「えー、、わからん。多分ない」
「なんやそれ」
「えっちしたいって思ったことはある、めっちゃ」
「ふはっ、めっちゃあるんや」
「それとは別って言われたら、、よーわからん」
唇を不服そうに突き出して、
自分が変なことに気づいてるのか、気づいてないのか。
「賢志郎さんのことは好きなん?」
「いやそんなん好きやろ」
「俺のことは?」
「好きやなあ」
「もりしは?」
「好き好き」
「かっるいなあ」
「、、もーわからんって!腹立つなあ!」
「いやなんでキレとるん」
キーーッ!て言いながら、足をバタバタさせる。
「好きって言うてくれる人とえっちしたことないん?」
「えー、そんなんみんな言うやん」
「、、まあ確かに言うな」
「せやろ?あんなもんえっちの演出みたいなもんやん」
確かに、ベッドの上で体を重ねると、
流れ作業のように言ってしまう言葉ではあるけど。
気持ちのこもった"好き"と、
その場を彩るための"好き"。
その違いがわからないらしい。
「、、じゃあ賢志郎さんからの好きは?」
「え、、」
「他のとちゃうかった?」
膝を抱えて、少し恥ずかしそうに
「、、、、、ちゃう、かった、、と思う」
、、無性に腹が立った。
わからないと悩む女にそんな顔をさせるほど
気持ちを伝えた兄さんにも、
しっかり届いてるその気持ちにも。
「うおっ!」
「、、やっぱヤ ろ」
「いやどこでスイッチ入ってん」
「ええけど」なんて言いながら、素直に組み敷かれる。
「ソファ汚れんの嫌やからベッドいこ」
「、、おん」
頭をぽりぽり掻きながら、ベッドへと歩みを移す姿は
きっと昨日気持ちを伝えた人の前とは、違う姿で。
嫌やのに、さっきの恥ずかしそうに膝を抱く顔が
俺の頭でぐるぐる回る。
またこのまま、軽いノリで
軽い言葉で
軽い関係を守り抜こうとしてる自分。
抱いたとしても、
Aの中から昨日の"好き"は消えんくて
もしかしたら俺とあの人を重ねるかもしれんくて、、
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作者名:よいちょちょちょ丸。 | 作成日時:2022年2月24日 10時