げいひめ。 (ページ3)

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＊

泣き疲れて眠ったAを抱え、ベッドまで届ける。

リ「……何人きとるん、これ」

ベッド脇に置かれたゴミ箱からは、これでもかというほど生々しいティッシュのゴミが溢れている。

寝息を立てるこの小さい女が、

どれほど辛さを紛らわせてきたのか、そのために自分を擦り切らせてきたのか。

リ「…酒池肉林やな」

灰皿からはとうに溢れかえった吸い殻が机の上にも進出していて、

酒の空き瓶空き缶の横には、煙草とコンドームの空き箱が転がっている。

漫才中、最後のツッコミの瞬間、

Aの相方が舞台上で倒れたあの日から1ヶ月半。

急いで暗転し、担架で運ばれてていく姿を見つめるAは、

行き場のなくなったツッコんだ右手と、眼前で目まぐるしく動く人たちを交互に目で追うだけだった。

呆然と、今の現状を理解ができていないかのように。

そして、その日の深夜には吉本興業のホームページに訃報の文字があがった。

リ「葬儀から会っとらん間に、、」

カーテンと窓を開けると、改めて部屋の悲惨さを思い知る。

転がる酒や煙草の他には、まともな食事を取ってる形跡はなく。

巨漢のくせにソワソワと俺の動きを気にしてるであろう相方に、お使いの依頼を送る。

すぐに既読になったかと思うと、

もりしまかせろ

とひらがな4文字。

バタバタといううるさい音が聞こえて来るようで少し笑う。

盛「えぇ、、なんかこの家、飛田の匂いすんねけど」

でかい袋を抱えてやって来たかと思うと、しかめた顔でそんなことを言って退ける。

リ「酒池肉林の現場やからな」

盛「ほなしゃーないな…え？どういうこと？」

大方片付けを終えたけれど、匂いは取り切れなかったらしい。

盛「はーー、よかった、A生きてるー息してるー！」

ベッドを覗き込みに行ったかと思うと、小声で言っては口元に手を当て、ぴょんぴょんとでかい図体を跳ねさせる。

乙女大男ちょっときついな。

ベッド周りに目をやると、匂いの原因を察知したのか、次は眉間に皺を寄せて。

盛「…まあた男連れ込んどんのか」

リ「…まあしゃあないんちゃう」

盛「……他にあるやろ、、甘えれるとこ」

悔しそうな顔して、ティッシュだらけのゴミを袋に詰める。

こいつにとっての"甘えれるとこ"に俺らはなれんかったんかな。