01 最後。 ページ1
＊
"なんでやねん"っていう最後の言葉と共に送った手が、
空を切った感覚が、
ずっと離れへん
_____最後。
リ「なあ、モリシ」
盛「なんや、どないしてん」
スマホの緑の画面を見つめ、相方に問いかける。
リ「Aと連絡ついた？」
俺の口から名前が出たら、一瞬で眉間にシワ寄せて
盛「…いや、ついてへん」
リ「…やんな」
一方的に送りつけてる白く並ぶメッセージと、
着信のマークを見つめる。
スクロールしても、途中から既読の文字はついとらん。
盛「ほんまあいつ、死んでんちゃうんか！」
リ「…いやそれはあまりにも非常識やろ」
盛「……そやな、すまん」
目も合わせず放った俺の言葉は、空気を和らげようとした相方に対して思ったよりも効いたらしい。
しょんぼりする大男は、「タバコ吸うてくるわ」とぽつりと残して去っていった。
喪に服す期間は終わったけれど、楽屋にいる芸人全員がどこか晴れない顔をしている、気がする。
そう見えるんは、きっと自分もそうやから。
リ「あ、ゆず兄」
ソファにだらしなくもたれかけた頭を少しあげると、チャラチャラした私服の兄さんを見つける。
ゆ「なんやおまえ、溶けてんのか」
リ「うわ、よーわからんツッコミしてきた」
ゆ「その状態のお前に言われたないわ」
ドカッと横に座って、小突かれる。
その小突きさえいつもよりパワーがない気がする。
ゆ「で？」
リ「なんすか」
ゆ「…劇場のお姫様はどないやねん」
"言わせんな"と含まれてる声を発しながら、自分の足元を見る。
リ「…連絡つかんすわ」
ゆ「お前でもあかんのかい」
ふぅー、と大きく息を吐いて上を見つめる。
ゆ「顔くらい見せてほしいわ、ほんま」
リ「ほんまに」
ゆ「俺らがどんなけ心配してんのか伝えといてくれ」
リ「じゃあ俺の分も頼んます」
ゆ「いや誰が誰に言うてんねん」
お互い目も合わさず、空に向かってふざけ合う。
ゆず兄の言う通り。
あいつと関わった人全員が、心配しとる。
『なあ、リリー。Aどうしてるん』
『リリーさん、Aさん連絡つきました？』
先輩から後輩まで、みんながみんな俺とモリシに聞いてくる。
リ「うっし」
溶けてソファとひっつきそうな腰を上げて
リ「ちょっと行ってくるすわ」
ゆ「…いや遅いねん」
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作者名：よいちょちょちょ丸。 | 作成日時：2022年2月24日 10時
