第14話 消えぬ傷 ページ16
モトキside*
｢お前、何してんだよッ！！！！」
ゲームに夢中だった俺は、シルクの怒鳴り声ではっと顔を上げた。
隣のダーマもぽかんとしている。
見ると、シルクはAの手首を掴んで、激怒していた。
対するAは、下を向いて口をぎゅっと結んでいた。
「ちょ…ストップ。何があったんだよお前ら」
見かねたダーマが口を開いた。…が、シルクは無視して続ける。
「こんなことしていいと思ってんの？！」
掴んでいた手首をぐっ、と引っ張る。
Aが小さく、痛い、とつぶやいても、シルクはずっとそのままだった。
「シルク、やりすぎ」
見ていられなくなって、二人の手と手を引き離す。
「何があったの。ゆっくりでいいから、説明して」
ふと、先程まで彼が掴んでいた手首に目をやる。
細くて白い腕には、刃物で切ったような無数の傷があった。
…もう随分古そうな傷から、新しい傷まで。様々なたくさんの傷のせいで、手首はぐちゃぐちゃだった。
あぁ、分かった。シルクはこれを見つけて怒っていたんだ。
仲間が大切だから、怒ってしまったのだろう。
「ねぇ、A。これいつからしてたの？怒らないから、教えて」
『…モトキくんには関係ない』
「教えて？」
『離して』
「A」
『…離してっ！！！』
「A！！！！」
びくり、と肩を揺らすA。
「教えて」
根負けしたのか、ゆっくりと口を開いた。
もう中学二年生から、ずっと続けていること。
癖がついて、止められなくなったこと。
最近も、まだしていること…
「話してくれてありがとう」
えらいえらい、と彼女の頭を撫でる。
「簡単にやめられないことなのは知ってる、俺も。だから急にやめろとか、もう絶対やるななんて言わない」
「だけどこれ、跡残っちゃうでしょ。痛いでしょ」
「もう腕、ぐちゃぐちゃじゃん」
「なんでも俺らに愚痴っていいから、なんでも受け止めるから」
「だからどうか、ちょっとずつ、やめる努力し
て欲しい」
「俺もシルクも協力するから」
気づけなかった自分が腹立たしい。
適切な言葉をかけられない自分が嫌だ。
こんな頼りないけど、君がこんなことしてるのは、嫌なんだよ。やめて欲しいって、思ったんだよ。
いつの間にか、シルクは泣いてた。
俺の目の前で、Aも泣いてた。
ちょっとずつていい。ちょっとずつ、Aが自分のことを大切していけるようになったら、俺はそれが嬉しい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みぞれ - 頑張ってください！この作品好きですっ！ (2017年3月27日 7時) (
レス) id: 931096523e (このIDを非表示/違反報告)
有乃(あの)(プロフ) - 雪桜さん» ありがとうございます、とっても嬉しいです！これからも精進します！ (2017年3月24日 1時) (レス) id: c4fc46a459 (このIDを非表示/違反報告)
雪桜 - ええとこれ好きです頑張ってください (2017年3月21日 21時) (レス) id: bd91b60462 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：有乃(あの) | 作成日時：2017年3月5日 2時
