１話 せっかくだから ページ2
「Aー、次の撮影さ」
そう、無邪気に私のことを呼んだのはシルク君。
くるりと振り返ると真剣そうな顔でこちらを見る。
ーーー生まれつき足の悪い私が、なんでフィッシャーズにいるのか。
些細なことだった。
モトキくんと大学が一緒で、彼は人と違う私にも優しくて、
色々お話して、フィッシャーズを知って、みんな(一部だけど)と会って。
編集とか、カメラとか、忙しくて手が回らないところをお手伝いさせて貰えるようになった。
まだ一回も動画に出たことない、けど。
それだけで十分だし、その方がいい。
ぼやぼやとそんなことを考えていると、シルクくんがそれでさ、と切り出す。
「次の撮影、動画出てほしい」
えっ。
違う、私これだけで十分です。
消極的な私を見て、彼は笑う。
「大丈夫、アスレチックじゃないからな。実験動画だよ、ゲテモノ。それに、紹介も兼ねて」
『紹介…？』
「だってさ、こんなに手伝ってくれてるのに、正式にフィッシャーズの一員になってないのって、なんか気持ちわりぃじゃん」
『あの、いないってことにしといた方が…』
「俺が嫌」
『えぇ…』
「絶対楽しいって、やろうぜ」
『何か言われたら、…』
『障害』というものを理由なく嫌う人がいるのは知っている。
それは、わたしにはどうしようもないもの。
その言葉に少し考え込んで、顔を上げて。
「そういうこと言ってくる奴らを全部黙らせることは出来ないけどさ、これは保障する」
「絶対、受け入れてくれる人はいるから」
その目はじぃっと私を見ていた。
「騙されたと思って、せっかくだしやってみようよ、な？」
車椅子の私と目が合うようにスッと屈んで、笑って見せた。
『じゃあ、せっかくだから』
ちょっとだけです、と釘を指す。
よかったよかったー、と部屋に戻っていく彼を見て、たくさんの不安と少しの希望が胸に広がった。
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みぞれ - 頑張ってください！この作品好きですっ！ (2017年3月27日 7時) (
レス) id: 931096523e (このIDを非表示/違反報告)
有乃(あの)(プロフ) - 雪桜さん» ありがとうございます、とっても嬉しいです！これからも精進します！ (2017年3月24日 1時) (レス) id: c4fc46a459 (このIDを非表示/違反報告)
雪桜 - ええとこれ好きです頑張ってください (2017年3月21日 21時) (レス) id: bd91b60462 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有乃(あの) | 作成日時：2017年3月5日 2時
