Ep.6'_ ページ28
『写真ありがとうございます！また機会があったら一緒に撮りたいです〜』
『編集部さんに連絡先渡す件大丈夫です！お願いします。』
この2件のメッセージに僕が気づいたのは、朝の5時だった。
昨日はたまたま早く寝てしまったから、焦って返信を打つ。
「写真撮る機会ってあんまりないよね」
「普段撮らないし」
「記事の件ありがとう！編集部からLINE来てると思うから確認してー」
「あと、今週の木曜日有給取れたから大学顔だそうかなって思ってる」
「Aちゃんいる？」
またしてもやりすぎたかな、世間話おじさんみたいになっちゃった。
しかも最後のやつ、僕がAちゃんに会いたいの丸出しみたいじゃないか。
間違ってないんだけど、バレそうで少し恥ずかしい。
『水曜日インタビューでオフィスお伺いする予定なのですが、水曜日って問先輩オフィスにいらっしゃいますか？』
その後も何回かやり取りをしていたら、こんなことが送られてきた。
僕に会いたいのかなって思うのは自意識過剰かな？
さすがにそんなわけないよなぁ。
自問自答しながらも少しショックになる。
やっぱりこの気持ちがバレないように、少し間をあけて返信する。
「水曜来るの！もちろん僕はいるよ〜」
正直来る時間とか聞いて最寄りまで迎えに行くよ！とか言いたいけど、さすがに不自然だし向こうに嫌われてたら病むからやめておいた。
そんな僕の配慮も虚しく(虚しく？)、なんと水曜日、お昼からオフィスに戻る時に、オフィスの前に見覚えのある顔を見かけた。
「あれ！Aちゃんじゃん！そういえば今日LINEで来るって言ってたね〜どうぞどうぞ」
一応お客様なので、ドアを開けてお通しする。
『問先輩！！またお会いできて嬉しいです！』
ドアを開けたことに、僕えらいでしょ。ちゃんと社会人なんだよ？Aちゃん？なんて思ってたら、また会えて嬉しいって不意打ちを食らった。
それ、どういう意味？
気になってる人にそういうこと言われると、誰にでも言う言葉も社交辞令も全部、僕のためだけの言葉なんじゃないかって勘違いしてしまう。
恋は、罪悪だなぁ。
夏目漱石の一節を、絶対に使い所が違うとは解っていながらも思い出してしまう。
「…っ、今日は取材だよね？編集部の人呼んでくるから、そこで待っててね。」
舞い上がって少し言葉に詰まっちゃったのが、バレてないといいな。
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作者名：莉愛 | 作成日時：2024年1月21日 21時
