・ ページ23
no side
『…………』
駿東は手紙を膝におろす。
手紙の文字はところどころ滲んでおり、
書いている途中で水が触れたのだと想像できた。
さらに書き手が震えていたのか、
文字も薄かったり、歪んでいたりした。
ぽたっ
と、手紙を持つ手に水滴が乗る。
『……ふ、ぅ……ぐ……』
頬を雫が流れ落ちていく。
それはどんどん増えていき、
やがて途切れることなく流れ続けた。
『ｯも、もっと、会いに来てくれても良かったじゃん、
一緒にご飯食べたり、話したり、もっと…もっと…』
まるで抵抗するように呟いていた駿東だったが、
途中からは口をはくはくと動かすだけで声はなかった。
母親の手紙を胸に抱きながら駿東は泣いた。
あの日、父親を怖がったこと。
母親の精一杯の謝罪を理解できなかったこと。
たった１人の弟を自分の代わりに死なせたこと。
あの日をずっとトラウマにしていたこと。
『ｯ……言って、くれなきゃ分からないよ……！』
家族を愛していなかった自分を恥じて、駿東は泣いた。
仕方の無いことだ、と誰もが言うだろう。
ＦＢＩと警察の親が隠していたのだ。
たった５歳の少女に気付けるはずもない。
ましてや気付かせるつもりなど無かったのだから。
愛されていたことに戸惑った。
でも心のどこかで駿東は気付いていた。
それこそ与えられた本の内容や、
わざわざ日本にＦＢＩが自分を保護しに来たこと。
違和感はいくつもあった。
大人になってそれに気が付いた。
駿東はポスッ、とベッドに倒れ込む。
『信じたく、ないよ……
「いらない子」だって言われて育ってきたから……
顔も見に来てくれない親なんて要らない、って
私も思ってた……
名前も知らない弟は両親に愛されてて、
女だからって愛してもらえないなんて理不尽だ、って。
……だから、負けないようにしようって……
反面教師として見てたのに……』
そこまで呟いて、また駿東の顔が歪む。
『……』
今度は腕で目元を抑えると、グッと唇を噛んで耐えた。
それからゆっくり腕を退けて、深く息を吐いた。
『…………全部、悪いのは「黒の組織」だ。
……そうだよね？
家族３人の死は、皆の死は、無駄にしない。絶対に。
この手で、守って貰った命で、組織を壊滅させてやる。』
駿東の瞳には強い意志が宿っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2424人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
沙羅(プロフ) - ぴのさん» 初めまして！コメントありがとうございます！なんと！最初から着いてきて下さっていたんですね…！ありがとうございます！！あああ、嬉しいです、面白いって言って貰えるだけで超頑張れます…！もうすぐ続編にいきますので、どうぞこれからもよろしくお願いしますー！ (2022年5月3日 13時) (
レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - はじめまして！この小説は、始まってからずっと読ませていただいています。とっても面白くて、何度も読み直してしまいます笑オリジナルの部分もとても面白くて、いつも楽しみにしています！お忙しいとは思いますが、これからも応援しています！！ (2022年5月3日 11時) (レス) id: dcb92af278 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 空白さん» コメントありがとうございます！長文大歓迎です最高に嬉しいです！！お話は悩みながら構成していたので、そう言って貰えると本当に救われます…ありがとうございます！萩原くんとの絡みも増える予定です！まだまだ更新していきますので、どうぞよろしくお願いします！！ (2022年5月1日 18時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
空白 - すみません、思い返したところ警察学校編の単行本からのようでした…！大変申し訳ありません！ (2022年5月1日 17時) (レス) id: faefab430e (このIDを非表示/違反報告)
空白 - 3回に分けた長文コメ失礼しました！これからも更新頑張ってください！！応援しています！！ (2022年5月1日 17時) (レス) id: faefab430e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：沙羅
| 作成日時：2022年1月3日 2時
