許嫁で純愛【呪術廻戦】

五本 ページ6

no side





『不動明王に命じる。
"我に仇なす者の悉(ことごと)くを滅せよ"。』





Aの言葉や声はあくまで落ち着いていて、
そして残酷だった。


呪力を無駄に消費してしまっては元も子もない。
故にAは感情を押し殺す術を学んだ。





【御 意 。】





Aの式神は完全自立型。
命令には従うが意志はちゃんとある。

強い式神ほど言葉はしっかり話せる。
そして命令を遂行すると自動的に消える。





『(頭がふわふわする…………
血を、流しすぎた…………？
でも……苦しくないし……気分は悪くない……)』





Aは抉られた脇腹を手で抑え、
猛攻を受ける呪霊をじっと見つめていた。





【覚悟。】





不動明王は縄で素早く呪霊を縛り上げ刀を構える。
呪霊は何か悲鳴を上げるが次の瞬間には塵となった。






【命令は遂行した。
……貴様は我らを式として喚ぶ覚悟があるのか。
我らはそこらの式とはまるで違うぞ。】





不動明王はズイとAに詰め寄る。
Aは呪霊に受けた傷はもちろん、
多量の呪力放出で朦朧としながら不動明王を見る。





『……私が貴方たちを喚べて…………
従えることが出来るなら……私は力を借りる。

私は、いつか…………人を守りたいの…………
大切な人、心から信頼できるを…………』






そこまで絞り出すようにして言ったAは
ついに意識を失い床に倒れ込んだ。







【承知した。……………我が主よ(・・・・)。】







不動明王は深く頷いて静かに消えた。







地下室には横たわるAと
乾涸びた髪の毛が数本落ちていた。

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