許嫁で純愛【呪術廻戦】

十五本 ページ16

no side




「A様！！」


『はい。』





読み物をしていたA、十三歳。
部屋の外から大きな声で呼ばれ顔を上げる。





「大変です！古式家が──────」


『え…………！？』





持っていた本を投げ出し、
身支度をするでもなく五条家から飛び出した。

行く途中で会った五条がどうしたのか問うたが、
家が、としか答える余裕が無かった。




───────────

───────

─────




『う"っ……』




玄関を開けた途端、血の匂いが襲ってくる。
Aも思わず顔を歪めた。





『この残穢は……一級以上……、』




Aは少し身構えながら家に上がる。
ひとつひとつ部屋を開けて中を確認する。




そして居間に辿り着く。
血の匂いも居間が発生源だった。





『ﾋｯ……』




扉を開けた先は床一面が赤色で覆われ
部屋の中心には兄だったモノが３つ。





『お、おにい、さま……』





返事は無い。





Aは赤い床を避けながら、
奥に続く台所へと向かう。





『おかあさま…………』





母親は台所の床に伏せていた。
赤い床に横たわる母親からも返事は無い。





『…………』





Aはそっと母親の目を閉じて台所を出る。
覚束無い足取りで廊下を歩く。






『！』





廊下の途中に赤い水たまりを見つけ、
それは裏口へと続いていた。





『お父様……？』





陰から顔を覗かせると
あと少しで外へ出る、という所に父親がいた。
父親もまた、うつ伏せに倒れていた。





Aは家を出る前に見た"あの目"を思い出しつつ
父親の顔を見ようと前に回る。





『ｯ……』





また"あの目"だった。
父親は辛うじて生きていた。





「ぁ…………ぅ……」


『お、お父様、』


「…………だ…………」


『お父様？！』





父親の震える手がAの襟首を掴む。





「おまえの、せいだ……！！
おまえが、家を守らないから、みんなしんだ……！」


『な、』


「呪ってやる……！！
おま、えなんて、産まなければ……！！
一生、憑いてやるから、な……ｯ……！！！」





父親からモヤのようなモノが湧き出し
手を伝ってAの首元に集まる。






『かはｯ……！？』






息が出来なくなったAは慌てて父親の手を払う。
その手が床に落ちると同時に父親は息絶えた。






『ﾋｭｰｯ……ﾋｭｰｯ……』






Aの息も荒くなり、
同じように床へ倒れ込んでしまった。

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