31ー４年前ー ページ33
no side
『うわぁっ！！』
「あははっ！何その声！ダサっ！」
「チョーシ乗ってるからだよ〜？」
「てかマジ１年でレギュラーとかウザすぎ。
うちら頑張ってんのにさぁ。」
放課後の音駒中学校の体育館でそんな声が響く。
先輩らしき３人の少女が中学１年生のAを
器具庫の中に蹴り飛ばしたのだ。
『や、やめて下さいっ……』
「はァ？やめるのはアンタでしょ。」
「そーそー！部活やめなよ〜」
「アンタのせいで３年間頑張ってきたウチらが
試合に出れないんだよ？罪悪感ないの？」
『そんな……私はバレーが好きなだけで……』
Aはぶつかった体操マットに背中をつけて
目の前に立つ先輩達を震えながら見つめる。
「とりあえず今日１日よく考えなよ。」
「明日の朝には出してあげるから。」
「ほら、アンタの好きなバレーボールあげるから。」
『う"っ、』
先輩の１人がAに
荷物とバレーボールをぶつける。
Aが怯んだすきに少女達は器具庫の扉を閉める。
『やっ……やだ！開けて下さい！！
お願いしますっ出して下さい！！』
３人の足音が遠ざかり、
体育館の重い鉄扉が閉まる音が響き渡る。
その後すぐにバツン、と電気が落ちる音もした。
『う……うぅ……怖い……怖いよ……』
暗くなった器具庫内は酷く寒かった。
今日は今年１番に冷え込む日だと
天気予報で口うるさく言っていた。
Aは震える手でジャージを羽織り、
床冷えを避けるためマットに座る。
その時ちょうどバレーボールがAの足にあたる。
『…………』
寒さと怖さを紛らわせるため
Aはボールを手に取り直上トスを繰り返す。
冬は暗くなるのが早く、
器具庫の上の方にある小さな窓から差し込む光は
すぐに月明かりへと変わった。
『寒い……』
生憎、今日は三日月よりも細い月で
器具庫の中はほぼ暗闇。
手元しか見えなくなり
上げたボールすら目視できない。
『ｯ……』
何度も転がり落ちるボール。
それでもAは延々とトスを続けた。
『大丈夫……きっと気付いてもらえる……
おじいちゃん……おばあちゃん……なら、
きっと探しに来てくれる、』
何かいるような気がする器具庫の隅。
Aは見ないようにと目を閉じる。
そのままトスは続けるA。
皮肉にもトスの技術は格段に上がった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 518人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
沙羅(プロフ) - ★さん» コメント、ご意見ありがとうございます。典型的な悪女を出して対立させたかったので登場させました。そう思われないよう、今後は気を付けて書いていきたいと思います。参考になるご意見をありがとうございました。 (2021年7月7日 1時) (
レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
★ - 姫野？ってキャラいる？いなくても話成り立つしむしろいることによって今までの面白さが無くなって残念です。 (2021年7月6日 22時) (レス) id: 0324f0d530 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ひにゃ。さん» コメントありがとうございます！皆様の応援のおかげで書いてくることが出来ました…！！本当にありがとうございます！入試、頑張ってきます！！ (2020年9月3日 7時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
ひにゃ。(プロフ) - 続編おめでとうございます…！受験生にもかかわらず、更新して下さった主様は神です…！入試頑張ってください…！東京から応援しています…！主様が志望校に受かりますように…！ (2020年9月2日 22時) (レス) id: b37bb85b42 (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 何となく方言わかった。だらー。 (2020年8月31日 23時) (レス) id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：沙羅
| 作成日時：2020年8月10日 21時
