８月・続続続続続々 ページ21
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おんおんと濡れた黒髪を振り乱して嘆く『水神』。
姿が見えているから"声"に聞こえるものの、
この"声"は水が唸る音に酷似している。
「だから言ったのだ…………
人間に感情移入してはならぬ、と……！！
見たか、見ておるのだろうツチノカミ！！
これが人間だ、卑しき人間の姿だ！！
恩恵を与える土地神であるお主を蔑ろにし、
邪魔だと言ってのける！！
この人間もそうだ！異変に気付かず一月を過ごし
この様な目に遭ってからやっと謝りに来た！」
バシャバシャと水飛沫が上がる。
蛇の尾が水面を叩いていた。
北は何も言えない。
確かに北は気付けなかった。
Aが悲しんでいる事に気付けなかった。
北の頬を水滴が滑り降ちる。
雨粒と混ざったそれは止めどなく溢れていく。
「すまん……すまん、A…………ｯ」
北はゆっくり地面に膝を着く。
鏡を強く抱き締めて北は泣いた。
涙と雨で顔がぐしゃぐしゃになっても、
土を含んだ水飛沫が服を汚しても、
北はひたすら謝って、泣いた。
いつの間にか『水神』は
黒く濁った水底に姿を消していた。
雨は降り続ける。
北は何でこんなに涙が出るのか分からなかった。
ただ田圃を見に来ていた女の子だったのに、
年の離れた妹くらいにしか思っていなかったのに、
いつの間にこんなに大切に思うようになったのか。
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涙が出なくなって、しゃくり上げるだけになった頃
叩きつける雨風に押されながら、北は立ち上がる。
「………邪魔やないよ。
Aは………大事な友達やねん。
それだけは、それだけは知ってて欲しい。」
握り締めた小さな鏡についた雨粒をそっと拭って
よろよろと北は高台を降りる。
田圃の横の祠の扉を開け、鏡を静かに戻す。
北は悲しそうに目を伏せ、
それからゆっくりと自宅の方へ歩き出した。
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去って行く北の背中を
静かに見守る小さな人影が雨の中にあった。
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます！！そう言って頂けて本当に嬉しいです！！読んで頂きありがとうございました！！！ (2021年7月4日 0時) (
レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます！来て貰えて本当に嬉しいです…！！切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……！！！読んで頂きありがとうございました！！ (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……！凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……！！ (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙羅
| 作成日時：2020年10月25日 19時
