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8月・続 ページ16

北信介side





それだけ言われると

もうええやろ、と家に追い返される。

帰り際にも念押しされてしまった。






「信ちゃん……体は大丈夫なん?」


「ばあちゃん、俺は取り憑かれてへんよ。
やって何も起きてへんもん。」


「でも……もしかしたらなんやけど……
Aちゃんていう子、最近は見ないんやろ……?
その子が……」





カタン、と玄関先から音がして

俺もばあちゃんもハッと顔を上げる。





「ちょお見てくる。」





玄関の戸を揺らすような音やった。

誰か訪ねてきたんやろか。





引き戸を開けば目の前には風呂敷包みを咥えた狐。





「え……?」





首輪のようなものを着けてるって事は

野生の狐ではなさそうやな。





「どうしたん?」





咥えていた風呂敷を玄関先に置くと

その狐はくるりと背を向けた。





「くれるんか?君、どこの子なん?」





人間の言葉が分かるわけないけど、

思わずそう聞いてしまった。





キャウン、と少し高めの鳴き声。

その狐はクイッと顎を突き上げる。





その指した先はあのお社のある山の方やった。





「……!もしかして、Aか……?」





直感やった。

きっとこの子はAと知り合いなんや、って。





「あっ……Aにお礼言っといてな!」





思わず狐の背中に言ったけど

今度は見向きもせず走って行ってしもた。





「……えらい躾されてる狐やな。」





賢い……いや、賢すぎる狐で不思議やけど

ちゃんと世話したればああなるんかな。





とりあえずこの風呂敷包みは貰ってええんよな。

ばあちゃんに見せたろ。





「ばあちゃん、狐さんやった。
この風呂敷包みを持って来てん。」


「そら不思議やなあ……
ああでも、お狐様と言えばツチノカミ様やな。」


「?」


「ツチノカミ様は
宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)様の系列にあってな、
穀物の神様と信仰されてん。

この辺りでは『土地神(ツチノカミ)』様て呼ばれてるけど
本当の名前はちゃうねんで。

お狐様は宇迦之御魂神様の眷属やから
あそこのお社にも祀ってあんねん。
信ちゃんも見たことはあるやろ?」





確かに、言われてみればそうや。

お社には狛犬やのうて狐さんが居るわ。





「じゃあ……Aはあのお社の子なんか?」


「そうかもしれんなあ。」





ばあちゃんと風呂敷包みを開けてみると

中身は夏野菜と折り畳まれた和紙の手紙だった。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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